愛玩ペットが一番マシかと思います!! | ナノ

  022 A兄さん>D≒ベルトルと言いたいところだけど


 
 
 理解できない俺にA兄さんがまたの機会に説明する時間を作ると言ってくれた。
 ベルトヤカの一員として知っていた方がいい知識があるらしい。
 繰り返される「永遠」「生き字引」「勇者」「邪教」そして「ベルトヤカ」この繋がりがさっぱり見えてこない。
 所詮俺の知識は聞きかじりでチートなんかじゃない。
 蜜鳩のように羽が生えると嬉しいかは分からないけど何か変化は欲しい所だ。
 いや、精液飲まなきゃ死ぬとかそういう方向じゃない奴やつね。俺の身体の変化がセクハラ方面にばっか特化するのはどうよ。
 
「年表の穴あきも彗星が来てくれたおかげで多少の改善が見込める」
「百年前の一国が消えた件がまだ終わってないのに今回は新しく七人ですから混乱は避けられません」
「すぅちゃんに何もないならどーでもいいよ」
「それはそうですね」
 
 Dとベルトルの会話が不穏なのは気のせいだろう。
 この世界に来てまだ一日経ってないのに何かあるわけない。
 そう思いたい。違ったとしてもそう思っとく。
 俺は自分の安全を一番に考えた人間だから見ないふりなんか得意だからね!
 
 それにしてもA兄さんの言う穴あきってなんだ??
 
 後でまとめて教えてくれるなら気になった時に質問するのは答える側として面倒かもしれないと悩んでいる内に話題が変わってしまった。
 俺の洋服をどうするかとかメチャクチャ重要なことだったので食いつかないわけにいかない。
 ごめん、蜜鳩。後で聞くから! 
 俺の知らないところで無事に勇者になっててくれ。安全であることを祈っておくよ。
 
「俺の服はA兄さん基準がいい!!」
 
 ここはちゃんと言っておかないとね。
 Dに任せたら全身網タイツとか持ってきそう。
 悪い意味でミニスカチャイナも目の毒。
 寒いって言ったらイグアナっぽいZに食べさせられるわけだしDは服装面で頼りにならない。
 ベルトルは脱がせやすいか手を中に入れやすい服装をチョイスしそう。
 A兄さん以外はセクハラ兄弟か!?
 
「わかった、彗星の髪は俺が毎朝セットする」
「髪の毛はいらないッ!」
 
 きっぱり言い切った俺に肩を落とすA兄さん。
 そんなにツッパリスタイルに愛着が!?
 ってか、俺の髪の長さでA兄さんレベルのフランスパンもといリーゼントは作れないと思うんですよ。だから、諦めて欲しいなって。
 
「彗星がハゲになりたがっていたなんて知らなかった」
「なりたがってないッ」
 
 なんでだ?
 髪の毛を否定したから??
 セットするのを断ったんであって俺は自分の髪の毛を否定したつもりなんかない。
 窓を見たら白いもこもこが外のライトに照らされてる。
 尻尾だから耳とかないし、目もないけど今の話を聞いてる気がしててただの白い塊がちょっとこわい。
 俺の髪の毛をムシャムシャする毛玉ってどうなんだ。
 いいや、尻尾なら口もないんじゃないのか。
 アレはいったいどういう生命体でどういう風に脱毛に関わっているのか謎だ。
 軽い綿毛がぽわぽわと俺にくっついただけで毛がなくなるとか手軽すぎて落ち着かない。
 物理法則無視なのか?
 考えないようにしてるけど俺の下半身は毛がなくなってお子様なわけだよ。
 立派なもさもさではなかったけどパイパンになると頼りなく感じてしまう。
 海外では毛がないのが普通って言われても馴染むまでには時間がかかりそうだし、日本に帰った後はトイレを気を付けないといけない。
 トイレ事情で言えば現在の俺の状況も異常だから見ないふり見ないふり。考えると落ち込んじゃうから気をそらすんだ。素数を数えたりしよう。

 思考が飛んでいた俺の頭をA兄さんが撫でる。
 わざわざ椅子から立ってまで?
 
「この感触がなくなるのは認められない」
「俺の髪の毛を気に入ってくれて嬉しいけど……スーツを着るのに髪の毛関係ないよね」
「正式な装いとして髪から靴まで統一するべきだろう?」
「何にでも例外って必要だと思うんだ」
 
 A兄さんは真面目さん!
 ちょっとのやり取りでも分かったそこが攻略のヒント。
 嘘でも誤魔化しでもなく正攻法で攻めればいい。
 一回でも言質を取れば今後も安心安全。
 
「髪の毛を固めたりするよりも自然体でいる方が触り心地いいと思うし」
 
 整髪剤はどんなもの使ってるのか知らないけど薄毛の原因になるっていうし、俺は何も弄らない方向で行きます。
 会うたびに頭を撫でていいから俺に素直にスーツを着せてください。お願いします。
 俺の熱い気持ち、A兄さんに届けとばかりに見つめていたらベルトルの魔の手が!
 脇腹をくすぐられて思わず椅子から腰を浮かしたのがいけなかった。
 ベルトルにズボンを脱がされてしまう。怒る前にニッコリと笑顔を向けられて毒気が抜けてしまう俺はベルトルに全面降伏だ。だって、かわいいんだよ。怒ったら泣いちゃうかもしれないじゃん。嘘泣きでも泣かせたら俺は罪悪感で心臓がきゅうきゅう痛くなるよ。
 
「きっちりは髪の毛セットするんでしょ?」
「あぁ、そうですね。服もきっちりじゃないなら、髪の毛は免除ですね」
 
 ベルトルとDが微笑みあう。
 Dに背広を取られて俺はシャツだけになった。
 このシャツはA兄さんのものってわけじゃないらしいけど俺には大きい。
 A兄さんのシャツなら下半身が隠れるかもしれない。
 俺は下着らしい下着をつけさせられていない。
 普通は羞恥プレイに興奮するところかもしれないけど心頭滅却すればの心意気。
 ちょっと違うけど、今後の俺のことや目の前のことに意識を向けていれば俺のチンコに得体のしれないベルトが巻かれていたりすることは些事。取るに足らないことを悩んでいてもきりがない。
 性器を隠すのが下着ならチンコベルトも下着だ。
 Dは他のもいろいろとつけさせたいらしいが、俺はそんなこと聞いてない。
 ペットの許可なく勝手な行動は慎んでくれたまえ。
 ベルトルは名前がベルトルだからかベルトをつけたり外したりするのにご執心。ベルトに隠れてないチンコの先端部分をぐりぐりしようとするベルトルは無邪気そのもので叱るのに神経が磨り減るから誰かちゃんと止めて!! 常識を教えておいてよ。
 まったくショタっ子に卑猥な遊びを教えのは誰だ。
 Dか? まだ見ぬ兄弟か??
 俺の下半身に頬ずりしてくるイケナイ子をA兄さんが叱ってくれた。
 A兄さんだけが俺の味方な気がしてくる。
 ベルトルが「ケチ」と言いながら舌を出す。かわいいけど騙されないから!!
 Dが「長男は融通が利きませんね」とベルトルの頭を撫でる。
 まるでA兄さんが悪いみたいな扱いだ。A兄さんもちょっと困った顔してる。
 
「彗星は外に出ないときは今の格好でいいな?」
「え!? う、うん」
「嫌なのか?」
「ズボン的なものか……せめてトランクスとか……ほしいなって」
 
 シャツだけで生活するのは自分の部屋なら別にいいかもしれない。
 人と会わない前提なら「だらしない」ぐらいで済むし。
 ベルトのせいでチンコはぶらぶらしないから気にしなかったらノーパンも気にならない。
 
 俺はズボンと引き換えにするほどリーゼントが嫌なのか?
 ちょっと似合わないってかやりたくない髪型ってだけでズボンを犠牲にするほどか??
 
 冷静にちょっと考えると何だかおかしい。
 リーゼントをOKすれば俺用のサイズの合ったスーツを作ってくれるかもしれないのに俺はリーゼントを嫌がって折角の機会を不意にしようとしているんじゃないのか?
 とりあえずはリーゼントをOKして後からやっぱり無理だと駄々をこねる。

 子供か!!
 
 でも、四六時中A兄さんと顔を合わせるわけじゃないから何とかなるかもしれない。
 俺はベルトルからズボンを奪還しつつA兄さんを見る。
 毛玉によるムダ毛処理の後にベルトヤカ三兄弟と一緒に俺は入浴した。
 ベルトル主催のぬるぬる地獄はともかくとして風呂から上がったA兄さんは少し湿った髪を自然乾燥をしているからツッパリは解除でスーツ。
 男の色気をまき散らしまくる目に毒な人が爆誕。
 Dも濡れた髪の色気はすごいけど艶やかな美女だからA兄さんとセットで見ると海外モデルの撮影現場な気持ちになる。
 どうやってモデルが撮影してるのかなんて知りませんけどね。
 美男と美女にしか見えない青年が話している姿は眼福。
 ベルトルだってヘアスタイル的にモデルっぽい。
 
「俺は別に髪の毛をセットしても」
「もし勝手なことしたら、すぅちゃんは罰ゲームね?」
「勝手なこと?」
「みんなが見てないところで髪型変えちゃうとか、服を変えちゃうとか」
 
 許可必要なんだ。そうだよね。ペットに勝手は許されませんね。ちくしょう。
 
「それで彗星はどうしたい」
「今の格好にトランクス的なものを……」
「これとか?」
 
 ベルトルが自分のハーフパンツを脱いで渡してきた。
 さすがに体格の違いから考えて履けないと思っていたけど勧めてくるから足を通した。

 問題なく履けた。
 
 これはきっと俺じゃなくてハーフパンツがおかしい。
 俺が小さいとかそういうことじゃない。ハーフパンツが思ったより大きいか伸縮にとんだ素材なんだ。
 履けただけで動くと股間に食い込むような感じになるし。
 って、え? これが目当てですか??
 ベルトルの中身はエロオヤジじゃないか!?
 Dもニヤニヤするな。美女顔でそんなゲスっていうか下品というか性格悪そうっていうか腹黒い顔されると悲しいから、やめて。
 
「今後はこの格好が彗星の正装だな」
「正装はやめて。部屋着ね、部屋着。外に行く時は……なんか、別のがいい」
「アルファの服でいいんじゃないですか? いっぱい残ってます」
「サイズ的にすぅちゃんにピッタリだねっ」
 
 Dの言葉にベルトルがニッコリ答える。嫌な予感しかしないけど、そろそろ眠い。
 食事も中断状態だからこのまま寝かせてくれないかな。
 今日一日で色々なことがありすぎた。
 早く寝たい。
 
 それにしてもこの兄弟は悪巧みをする時はA兄さん抜きって決まってるのか?

 A兄さんが長男として両親が不在なら最高権力者だと思ったのに弟たちがタッグを組んだら負けてるよ。
 根がいい人なのか、A兄さんは弟たちの性悪さに気づいていない気がするからいざって時に助けになるのか謎だなーと失礼なことを思う。
 
 ワイシャツとズボンで生活できるんだから明日は今日よりいい日だ。
 そういうことにしておこう。
 
 

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