愛玩ペットが一番マシかと思います!! | ナノ

  019 緩急つけるのやめてくれよ


 
 
 ベッドからシートが敷かれた床に俺はうつ伏せになっている。
 全裸で脱力している俺はサンルームで日焼けをしていると思えば恥ずかしくない。
 周りに人なんかいない。
 居ないと思い込め!!
 俺は自室で開放感あふれる格好しているだけだ。
 誰も俺を裁けない。
 羞恥など懐かない。
 堂々としていればなんということもないのだ。
 心の中でどういったところで歯噛みしたい気持ちはふつふつと湧き上がる。
 どうして俺がこんな目にあうんだ!!
 分かってる! 分かってるんだよ。
 ペットだから主人の都合で振り回されますよ。
 
 ちくしょー!! いつか分かりにくく復讐してやる。
 あれか? 焦らしフェラか??
 イキたいのにイケないのってつらいよね、とかそんな感じ?
 復讐というかプレイみたいだ。俺のあるか分からないテクニックを見せつけるいい機会かもしれない。次にやらなければならない時は焦らそう。
  
 ちなみに蛇は居ない。
 蛇は居なくても俺は全裸のまま甘んじている。
 どうやってもぺろぺろから逃れられない。
 ぺろぺろされすぎて身体に力が入らなくなっていた。
 
 間違っても快楽に腰砕けになって息も絶え絶えとかじゃない。
 舐められて気持ちいいわけないだろ。失敬だな。
 
 白黒蛇が居ないのは俺を無視していちゃついているからというよりもベルトルが俺の前面ばっかり舐めるのは問題だと主張した。俺をひっくり返したり色んな格好をさせたいらしい。
 色んな格好ってなんだ。嫌な予感しかしない。
 
「すぅちゃんのハジメテはちゃんとオレがもらってあげる〜」
 
 ハジメテってなんだ。
 全身ぺろぺろされるなんて立派にハジメテを持ってかれましたから、坊ちゃまベルトル坊ちゃま、落ち着いて。ねえ、俺の腰を揉むのをやめようか。手がちょっとずつ下がっていって尻を左右に広げたりするの、その、なに? 中見えるから。やめて欲しいな。
 ベルトルはもっと遠慮とか慎みを覚えると優等生でかわいいと思うよ。
 子供は元気でやんちゃが一番だって言っても控えめな方が絶対に大人にウケるから。本当本当。
 やめてホント、そんなに広げたら不思議石が見えちゃう。
 あ、え? チェックですか??
 入ってます、入ってます。
 大丈夫です。先住民がいますので指を入れる必要とかありませんから。
 俺の尻は不思議石に占拠されてて通行止めです!!
 他のものは一切入りません。
 確認作業もいりません。
 きちんと不思議石は存在してるので、わざわざ確かめようとしなくても結構です。
 この場合の結構はお断りしますの意味だから!
 
「えいちゃんのはおっきいからまずはオレので慣らしてからねぇ〜」
 
 挿入前提で話をするのはやめていただきたい。
 というよりもA兄さんのサイズとか知りたくない。
 だってDもフル勃起状態は大きかった。
 Dより体格がいいA兄さんなんて凶器に決まっている。
 体内に迎え入れるのは狂気の沙汰。
 凶器は人を傷つけるんだよ?
 誰だって知ってることをどうして子供に教えてあげないんだ。
 
「えいちゃんのきっと病みつきになっちゃうからその前にオレので楽しんで」
 
 誰がこんな小さい子に卑猥なことを吹き込んだ!!
 それにしても尻をカプカプ噛むのはやめろ。
 揉んだり抜き差しもダメだけど人の尻たぶを何だと思ってるんだって気力を振り絞って後ろを振り返ったらA兄さんだった。
 両足をそれぞれ触られてるというか何かを塗られていると思ったけど、さっきまでベルトルが俺の尻担当だったはずなのにいつの間にかA兄さん。
 俺の尻を甘噛みしたかったから弟とポジションチェンジしたの?
 わざわざ??
 
「……なに、をしてるんでしょう?」
 
 思わず敬語。
 家族には気安くしていいって言われても、訳の分からない事態に人は上手く対処などできません。
 A兄さんは俺を無視してカプカプ。歯形をつけたりしない絶妙な力加減。赤くなっているけど痛みは実はない。尻って脂肪だし。俺の筋肉は大したことないから力を入れたところでそこまで硬くならない、やわ尻です。桃尻っていうのは否定しておく。なんとなく貧弱な響きがするから。やわ尻のやわは軟弱のやわじゃなくて柔らかだから!!
 
「あの……?」
「彗星の脱毛の準備をしてる」
 
 A兄さんが教えてくれた。
 無視していたんじゃなくて弟たちが答えると思ったのかもしれない。
 二人は俺の言葉に答えることもなく一心不乱に黙々と作業中。
 A兄さんは息を吐き出しながら俺の脇腹をくすぐるように撫でる。
 このA兄さんとの温度差はなんだ。
 ベルトルもDも真剣な顔で俺に白くドロッとした液体を塗っている。
 隙間なんか作らないって気合がその顔から伺えるけど、脱毛だと?
 
「舐めている時に毛が口の中に引っかかったりするから」
 
 舐めなきゃいいと思います。
 ベルトルは手を一瞬だけ止めて話してくれた。
 
「ちゃんと処理してツルツルにしてあげるよ」
 
 ショタっ子ベルトルのにぱっと音が付きそうな笑顔を見せられても足の裏とか必要なさそうなところにまで塗りたくられているものが気になる。ちょっと痒いけどそんなのは言えない雰囲気なので俺は後ろを向くような姿勢をやめた。
 ちょっとの間だけでも無理な体勢を取ったせいで首が痛いので大人しく目を閉じて用意してくれていたクッションを抱きしめておく。
 
 ぺろぺろされすぎて液体塗りたくられて脱毛処理されるぐらいなんでもない。
 A兄さんが明らかに脱毛関係なく俺を甘噛みしてても何も考えない。
 
「そういえば、でぇーくん」
 
 このおばあちゃんが「CD」を「しーでぇー」って言うようなDの発言は何なんだろう。
 ベルトルがかわいいから許される「でぇー」の発音。
 デェリトルフラウ・ベルトヤカだから「でぇー」なんだろうけど俺はD呼びだからなんか気になる。
 
「勇者サマが来たんだって?」
「あぁ、我々を救いたいらしいですね」
 
 嘲るようなDの言い方によくないものを感じたけれど話題の中心になっているのは蜜鳩だろう。
 いつ情報交換をしたのか知らないけれどDは別室での会話は全部知っているみたいだ。
 Dに聞けばみんなが何処で何をしているのか分かるだろうから俺はみんなが近くに居なくてもそこまで心細くない。でも、気になることは気になるので俺から聞く前に知ることが出来るなら助かる。
 
「救いたいなら救ってもらわないと、ねぇ〜」
「彼は病原体に感染していると見ていいでしょうね」
「あぁ、白い髪に赤い瞳なんてそうとしか考えられない」
 
 俺の尻から口を離したらしいA兄さんも会話に参加。
 噛り付くのをやめてくれたみたいだけどA兄さんは俺の尻を撫でている。
 労わってくれてるなら執拗になでなでするのをやめてくれるのが一番なんですけど。
 手のごつさに似合わない力加減が落ち着かない。
 
「ベルトヤカの長男として面会しにいかないとならないか?」
「あぁ、そうですね。お願いします。その前に死ぬかもしれませんけど」
 
 不穏な発言に俺の身体はビクッと跳ねる。
 蜜鳩の話題で死なんて単語が出てきたら落ち着かなくて当たり前だ。
 
「危ないのか?」
「彼がですか? そうですね、早死にしそうです」
「どうして……」
「スイ、わかりませんか」
「英雄願望があるから?」
「その通りです。彼はそもそも死にに来たんです」
 
 チート能力を貰って楽に勇者をやるとかそういう話じゃないんだろうか。
 蜜鳩はこの世界で何をしたいんだろう。
 
「勇者になれるなら死んでもいい、死ぬことによって勇者になる。そう思っているんじゃないですか?」
「魔王なんか居るの?」
 
 そうじゃなければ勇者は勇者を名乗れないんじゃないのか。
 
「魔王……ですか、そう呼ばれているのは長男ですね」
 
 まさかのA兄さん魔王説。
 ベルトヤカは冷酷無慈悲なんだっけ?
 それなら魔王呼ばわりされるのは納得かもしれない。
 
「長男は地方の村で言うことを聞かない子供を脅かす役をしてます」
「まさかのなまはげ!!」
 
 悪い子は居ねえが〜ってやってるの??
 A兄さんってば……苦労性をまとわりつかせて何処に行きたいんだ。
 
「悪い子はベルトヤカに攫われるぞ〜っていうのは昔からのお決まり文句だからねぇ〜」
 
 ベルトルが笑いながら俺の脇の下をくすぐるように液体をつけていく。
 話しながらも着実に塗りたくられている俺。
 乾いたらぺりぺりぺり〜っとやられるんだろうか。
 剃刀を使われるよりも怖くなくていいけど。痛いんだろうなぁ。
 
「蜜鳩にえい兄さんは成敗されるの?」
「何かするならベルトヤカ側でしょうね」
「汚染度にもよるだろう」
 
 中二病は治らないんじゃないかな。
 汚染度高いよ。
 
「そこまで酷くなる前に誰かが手を打つでしょう」
 
 副会長とか誰かしらA兄さんに襲い掛かる前に止めてくれるだろう。
 蜜鳩がいくら目の前しか見てないって言っても問答無用でA兄さんを襲ったりはしないはず。
 
「じゃあ、スイ。脱毛しましょうか」
 
 俺の身体に液体を塗り終えたらしい。
 ベランダに繋がっている窓を誰かが開ける。
 風と一緒に何かが入って来た気配がするけど首も痛いし身体をひねって液体が変なところに触れるのもマズいから大人しくしている。
 
 そして俺は思い知る。
 この世界は俺の知っている世界じゃない、異世界なんだっていうことを改めて実感する。
 
「え、ケサランパサラン??」
 
 白い毛玉がふわっと俺の目の前に飛んできたのだ。
 そのまま毛玉は俺の指先に触れる。脱毛用らしい液体を舐めるケサランパサランもどき。
 大きさから考えるとケサランパサランよりも身体を丸めたウサギや猫かもしれない。
 白いふわふわした毛玉は幸せを運んでくるとか言われている。
 妖怪だったはずのケサランパサラン。
 
 足に違和感を覚えて身体を少し動かして自分の足を見てみれば大量の毛玉。
 白い毛玉が俺の身体に群がっていた。
 気が遠のきそうになるが「便利ですよね」とDが言い出すので「怖いよ」とちゃんとツッコミを入れておいた。
 重さのない毛玉が大量に俺に引っ付いている姿は悪夢そのものだ。
 
 

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ケサランパサランはタンポポやガガイモの綿毛やまっくろくろすけを白くした感じをイメージ。


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