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  幕間 ベルトヤカファミリーの日常(ペット受け入れ前)


グロ・エロ・リョナ・残酷表現、ホラー要素(?)注意。
(主人公に対するものではありません。主人公の出番はありません)

明るく楽しいのが読みたい方は飛ばしても支障ありません。
次の話のまえがきに今回の話の箇条書きで内容を載せます。



 ベルトヤカという家のことを説明する人間は境界の中に居ない。
 それはベルトヤカが生活に密着していて境界に住む人間の誰もが知っている存在だからだ。
 たとえば今の王様が猫であることは誰でも知っている事実だがどうして猫が王様であるのか説明出来る人間は少ない。王様は王様である、理由にならないトートロジー。ベルトヤカはベルトヤカでありベルトヤカ以上にも以下にもなりようがない。境界の中の掃除屋さん。裏切者は情け容赦なく殺すのがベルトヤカの仕事。決して死神とは言われない。ベルトヤカは崇拝している神がいる。そのため自分たちが死神とはいえ神と言われることを嫌う。ベルトヤカを神扱いする人間はベルトヤカが崇める絶対神を愚弄しているとしてあっさりと屠られる。
 
 
 王様は境界の中での絶対であり優先される存在だがベルトヤカは境界の中での独立組織であり境界の中の異端であり根幹である。
 
 
 水色の髪をした人間が人を連れ去ったとしても誰も何も思わない。
 連れ去られた先でどんなことをされていたとしても人々は無関心だ。
 名乗る必要もなく水色の髪をした人間はベルトヤカだからだ。
 
 
 
 その日も外からは真っ黒な建物にしか見えない場所でベルトヤカの長男は仕事に励んでいた。
 男でも女でも老人でも子供でも彼が手加減をすることはありえない。
 
「ひぃぃきぎぎぎぃぃぃあぁっぁぁぁぁ」
 
 鉛筆を削るように足の肉をナイフで削いでいた。
 果物ように簡単には切れないから長男がこの作業を面倒で嫌いだと思っていることなど誰も知らない。
 真面目に仕事をしているせいで好きだと思われている節さえある。
 この行動に意味は特にない。仕事だからそうしているだけだ。
 血で服が汚れないように作業は裸で行う。
 他人の尿や便で汚れることも珍しくない。
 痛みで下が緩くなるらしい。
 不愉快ではあるが中身を空にしてから解体作業をするのは手間がかかりすぎる。
 
 足の肉をえぐったぐらいでは人は死なない。
 部屋の上部から水が流れて部屋についている排水溝へ血や脂が流れていく。
 部屋にいくつか開いている穴から真っ黒い蛇が現れた。
 舌をチラチラ出している蛇に「任せた」と言い残して長男は部屋を出た。
 治療はしないが蛇の毒で痛覚は麻痺して痛みは快楽に置換される。
 
 ベルトヤカの役目は「病原体」の発見だ。
 あくまでも「病原体」というのはベルトヤカの中での通称であるが「その存在」この境界において「病原体」としか思えない動きをする。
 境界の存在意義を覆そうとする。
 
「俺は間違ってない俺は間違ってない俺は間違っていない」
 
 裸で水に濡れたまま隣の部屋に入った長男を迎えたのは両足のない男の狂った呟き。
 恍惚とした顔は手遅れだった。
 溜め息を吐きながら長男は男をうつぶせにして顔を床に抑えつけながら犯した。
 長男の性器は体格に見合った立派なものなので男の尻は裂ける。
 その痛みすら快感であるというように奇声を発する男の頭を不快気に叩きながら長男は腰を動かす。
 気持ちの良さなどないが射精しなければならないので男の尻の中へ精を吐き出す。
 男なら尻に女なら膣に。
 本当に後は死ぬだけの人間には口の中に出してやる。
 それがベルトヤカの長男としての仕事だった。
 
 ベルトヤカの人間が黒い外観の建物でするのは治療ではなく殲滅と浄化。
 すでに「病原体」に侵されて手遅れな人間を昔ながらの手法で壊していく。
 まずは手足、次に内臓、最後に頭。
 ベルトヤカの人間の精液には個体差が多いが毒物が含まれる。
 長男はそれを「病原体」に侵された人間に打ち込むのが仕事だ。
 すでに擬似毒は開発されているので長男が性行為のようなことをする必要もないのだが昔気質な長男は自分にノルマを課して仕事をしている。薬を作り出すのは金も材料も時間も必要になる。長男からすれば自分の精液で済むのなら話しが早かった。
 自分が疲れない範囲で長男は「病原体」に侵された人間を壊していく。
 
 これ以外の方法は基本的に存在しない。「病原体」を保有した人間は燃やして灰にしても煙の中に「病原体」があったり灰に「病原体」があるので「病原体」を拡散させることになる。
 どの温度で加熱しても逆に冷凍してみたところで変わらない。
 一週間あるいは一ヵ月ほどかけて肉体を壊していくのが「病原体」を無効化する方法。
 その生物に宿っていても目的は成せないと教え込む。
 肉体から追い出すことは出来ないが肉体の中に閉じ込めて拡散を防ぐことができる。
 
 内臓を壊すために吐き出される長男の精液ではあるが単純な毒物とはまた違う。
 脳の神経に作用して快楽中枢を刺激する。
 中毒性があり長男の精液なしでは立ちいかなくなり求めだす。
 食への欲求や睡眠欲よりも大きい。
 ベルトヤカの中で「魂を犯す」と言われる行為だ。
 先に「病原体」に汚され上書きされた存在をベルトヤカが染め直す。
 それが救済。ベルトヤカが居なければ「病原体」に境界は元より世界は汚染されて滅びる。
 
 どうしてベルトヤカがこの仕事をしているのかと言えばベルトヤカの人間が崇める神が世界の敵の敵だからだ。世界を滅ぼそうとする存在を決して許さない。どんな行動をとることになっても世界を壊す存在を滅ぼす神。やり方が極端な神ではあるが世界を壊す存在を神は決して許さない。「病原体」は神の敵である。
 
 悲鳴の間にブツブツと呟き続ける少年と言っていい年齢の男を犯しながら長男は溜め息を吐く。
 これは性欲処理ですらない作業だ。淡々と床に芋虫のように並べられた人間だった存在を精液まみれにしていく。サディストではないので自分の男性器が外からも分かるように少年の腹を膨らませていても何も思わない。
 血を吐き出していても何も思わない。
 長男の心がないわけではなく仕事でしかないからだ。
 
「……ぎぇ、ぇ、ぁ、……たす、けてぇぇ」
 
 少年の哀願を見るためにうつぶせではなく仰向けにしたわけではない。
 年齢が幼いせいか比較的汚染が低い。
 
「何処に行きたい?」
「カエシテカエシテカエシテカエシテカエシテ」
「何処に行きたい?」
「カエリタイカエリタイカエリタイカエリタイ」
「何処に行きたい?」
「ニホンに、かえる、……かあ、さんが、……あい、して、ぼくの、ぼく」
「誰と会いたい?」
「アアハハッハハハハハハハ」
 
 成功するかと思ったがダメだったと長男は吐精して腰を引く。
 どれだけうるさくても足の肉を切る時も犯す時も口を閉ざさせたりしないのは情報を手に入れるためだ。
 
「ムリニキマッテルモウムリナンダ」
「誰の言葉だ?」
「隕石が隕石が隕石が隕石が隕石が隕石が隕石が…………太陽を壊した」
 
 そして、何度か聞いたことがあるように「かあさんたすけて」を繰り返す。
 少年に対して哀れだとは思わない。
 この少年の言葉ではないのだから。
 ただ「病原体」の言葉ではない。
 この言葉を解き明かさなければベルトヤカは先に進めない。 
 母親に助けを求めながら愛してほしいと手を伸ばしているのは母親ではない誰かに対して。
 
 境界の人間はたぶん全員が「病原体」を取り込んだ健康保菌者。
 発病してベルトヤカに連れて行かれる人間は意味の分からない言動を繰り返す。
 少年と呼べる年頃の人間だけは意味が分からないまでも何となく同じような言い回しをする。
 
「ハヤクハヤクハヤクキテ…………ボクの彗星」
 
 新しい情報はないかと諦めていた長男の耳に初めて聞く単語。
 
「スイセイ?」
「落ちてきて、落ちて落ちて落ちて落ちて、ボクと同じようにおちて」
 
 そうじゃないとズルいと小さく聞こえた声は聞き間違いではないだろう。
 今まで一度もなかった意味のある、感情が乗った言葉。
 
 単純な恨み言じゃない。
 愛憎が煮込まれた言葉。
 
 ゆらりと少年が起き上がる。
 足はすでに切断済みで息絶えることが秒読みの少年は穏やかな顔でベルトヤカの長男を見た。
 微笑んで長男に手を伸ばす少年。
 今までにない反応だ。「病原体」に侵された人間は同じ言葉を繰り返す狂った存在に成り果てる。
 理性が戻ってくることは稀で、本人の意識が戻ってきたら必ずベルトヤカに礼を言いながら早く命が尽きることを望んだ。それ以外に道がないからだ。
 
「これから彗星に触れる手足がボクに触れた。ボクが彗星を抱くのと同じだ。彗星はボクのものだから」
 
 静かな声音で告げた後、少年は血を吐いて倒れた。
 慌てたように扉がノックされて見知った顔が入ってくる。
 
「えいちゃん」
「ベルトル、服を着たまま入ってくるな。汚れる」
「……でぇーくんがペットを連れてくるからお茶会しようって」
 
 いま聞いた言葉をもう少し考えたいし報告書を作らないといけない。
 お茶会なんてしている暇はない。
 自分の腰ほどもない小さな存在に舌打ちをするほど子供ではないと長男は自制する。
 部屋の中は地獄絵図と言っていいほどに人間がグチャグチャな状態で転がっていることもあったがやってきた長男「ベルトル」と呼ばれた少年は見た目が幼いがベルトヤカの人間だ。
 床で呻き声を上げる人間たちに恐怖など感じていない様子で長男に近づく。
 
「これからお家でペット飼うんだって」
「ペットだと?」
「ベルトヤカとしてのペット」
「Dのペットじゃないのか?」
「でぇーくんは独占欲が強いから家族みんなのってことにしてあげたんじゃないかなー」
「俺はあまり飼育に関わる気はない」
「だよねー、オレも興味ないんだけどー」
 
 もじもじと動くベルトル。
 自然と上目遣いになるベルトルに眉を寄せる長男。
 
「陛下が……イジメないであげてねって言ってた気がするんだよねー」
「それは本当か?」
「現在の陛下はラプラスの魔だからベルトヤカとして逆らうわけにいかない」
 
 ラプラスの魔、神託機械とも言われる計算によって未来を導き出す存在。
 ベルトヤカにおいてDが連れてくるペットを長男とベルトルがイジメたりする可能性があると王様は考えており、ペットをイジメることは誰に対してか分からないが不利益が出てくるからこその忠告。
 
「名前は聞いてるか?」
「あー、えっちくんが何か言ってたかも……あー、んー、と……あ! スイセイ?」
 
 全く興味がなかった新しく家族の一員になるペットに長男が興味を持った瞬間だった。
 仕事を生きがいというより仕事以外をすることがない長男にしては珍しすぎる反応を今後することになるが、ベルトルも長男もまだ知らない。
 

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