「部活動?」


月日は変わり、5月になった。本格的に部活動が始まる季節だ。

一年生は強制的に部活に入らなくてはならないので、私も何部にしようかなと頭の片隅で悩んでいた。


「じゃあ今日部活動巡りしてくるよ。二人はテニス部だもんね!行ってらっしゃーい」


私は部活に向かう二人を送り出した。二人から一緒にテニス部に入ろうと言ってくれたのだが、私は曖昧に答えただけだった。


「運動は…得意じゃないしなあ」


うーん、困った。こんなに困るなら中学はもっと真面目に部活すればよかった。


「中学は家庭部だったけど…」

せっかく高校に入ったのだから中学とは違うことがしたい。

中学とは違うこと…
中学とは違うこと……


なんだろう?


とりあえず一個一個回って行こう。 

文芸部に手芸部、ボランティア部に吹奏楽部…うーんイマイチパッとしない。


「ん…?」


渡り廊下を歩いていると、目の前には女子生徒が外に向かって叫んでいる。


何をしているんだろうと近づいてみた。



「あえいうえおあおー」




もしかすると発声練習だろうか?


「あれ?一年生?」


「えっと…はい!」


向こう側にいた先輩が話し掛けてくれた。


「どう?演劇部とか」


演劇部か…発声練習をしている先輩は真剣そうに、でもちょっと楽しそうにやっているようにみえた。


「さっ!あなたも発声練習はいかが?はい、せーの!」


ドンと肩を押され、窓側に来た。もうこれはやるしかない。


「あえいうえおあお…」



恥ずかしくて声が出ない。声が出なくて先輩は怒っているだろうか?

「うん、うん。最初はそんなもんだよ。でも、スッキリするでしょ?」 
言われてみれば…確かにそうかもしれない。


「役に成り切る…あなたならきっとできるわ!さ、この紙に名前を書いてみて」


私は先輩に言われた通りに名前を書いた。


そしてその紙を先輩に渡そうとして、顔を上げると…



「「「「「入部ありがとうー!」」」」」


私はたくさんの先輩方に囲まれていた。その中に一年生が混じっていた。


「これで劇ができるわ…あっ、私は部長の2ーAの藤崎よ。よろしくね雅ちゃん!それと、顧問はなんと珠翠先生なの!凄く良い先生だから、大丈夫よ」


何が大丈夫なのかはわからないが、とりあえず先輩方が優しそうなのと、劇をやるのが楽しそうだ。


私は今日から演劇部に入った。




end
20110304
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