「これ雅ちゃんと二人で行ってきなよ」
「これは?」
「見て分かるでしょ、プールの半額チケット」
そうやって無理矢理渡されたプールのチケット。
期限は明後日までだった。
「晏樹め…」
その呟きは晏樹には聞こえなかったようだ。
晏樹は鼻歌を歌いながら教室へ入っていった。
ぐしゃっとチケットを潰してごみ箱に捨ててしまおうとした時、雅に話し掛けられた。
「会長が探してたよ?あれっどうしたの皇毅君?」
「つくづくお前は間が悪い時に来るやつだと思ってな」
雅は頭に?マークを浮かべた。
「あっ、プールの半額チケット!いいなー皇毅君羨ましい!」
「なら、やる」
「えっ、でもこれ皇毅君が貰ったものだし…友達とか誘って行ってきなよ」
男だけで行って何が楽しいんだ。しかもチケットは二枚だけ。男二人で行くなら自分は絶対に行かない。
「なら、女子でも誘うか」
「えっ!?」
な、何なんだ雅は…冗談が通じないのは昔からだったが、ここまでとは
「皇毅君モテるからより取り見取りだよー」
「そうか、ならそうすることにしよう。だから明日迎えに行く。ちゃんと準備しておけよ」
「わ、私が行くの?」
お前の他に誰がいるんだ。
そもそも雅以外とプールに行って何が楽しいんだ。
「でも…私、学校の水着しか持ってない」
「お前…まさかそれで行く気じゃないだろうな?」
雅をスクール水着で行かせるわけにはいかない。
あいつのスクール水着姿を見るのは自分だけでいい。
「い、いかないよ…それに中学の時のだから少しきついし」
「ゴホッ…」
無理だ…この話を雅と続けていられる気がしない。
頭の中がピンクに染まる。
ぴっちりとした水着を着た雅を想像して、鼻血が出そうになった。
「じゃあ、水着買いに行くぞ。プールはまた後ででもいいだろ」
「ああっ!チケットが」
容赦なくチケットを破いた。
「あーあ、チケットが…」
「雅、行くぞ。」
雅の手を強く握り、生徒会室へと急いだ。
end
20110611