「今日は暑いねー」
「まあ…夏だからな」
私は皇毅君が生徒会の仕事を終わるまで生徒会室で待っていた。
「夏休みだから雅は家に居たら良かったじゃないか。幼なじみだからって、わざわざ私と一緒に居なくてもいい」
夏休みになって、私は部活動が忙しくなった。
「そういえば、雅は何の役をやるんだ?」
「私?私はね、木だよ!」
「………」
えっ、何でそんな無言なの?木だってちゃんとした役なのに!
「ま、まあ一年だもんな。出させてもらって良かったな」
「うん、私一生懸命頑張るよ!」
皇毅君はそうかと少し笑った。皇毅君の笑った顔は久しぶりに見た気がする。最近生徒会で忙しいみたいだし、何か息抜きできるものはないだろうか?
「ねえ、帰りに商店街に行かない?」
「またシュークリームか?」
「違うよ!ただ…最近忙しいみたいだから、息抜きに散歩ってどうかな〜って」
ふむと皇毅君は考えだした。それより、仕事はいつ終わるのだろうか?
「雅なりに考えてくれたみたいだし、行ってもいい。後、10分くらいで終わるから支度しろ。」
頷き、帰り支度を始めた。乱雑に置かれたテキストにノート。私は夏休みの宿題が早く終わるように、涼しい生徒会室でやっている。
ちなみに生徒会で仕事しているのは皇毅君だけだ。
他の人は特に仕事がないようだ。
「やっぱり暑い…」
「日陰に入れ、ほら」
力強く私の腕を引っ張り、私を日陰に入れてくれた。
商店街につくと、人はまばらだった。
「やはり、この時間はまだ暑いか…」
今は午後3時。もう少し遅かったら暑くなかったかもしれない。
「あっ!皇毅君アイスクリーム!」
「雅、ちょっと待て」
ここのアイスクリームはとっても美味しいから、絶対に皇毅君に食べさせたい。皇毅君は普段甘い物を食べない。だから、たまには甘い物を食べさせたかった。
「私が買ってくるから皇毅君はここで待っ…」
かばんの中にはテキストとノートと筆記用具しか入っていなかった。
「雅はここで待ってろ。」
「えっ…」
皇毅君は私にそう言うと、買いに行ってしまった。
(あーあ…今日は私が皇毅君に買ってあげたかったのに…)
どうしてこうも上手くいかないのだろうか。シュークリームを貰ったし、勉強も教えてもらったから、これくらいはしたかった。
「ほら、雅」
「あ、ありがとう。お金は後で渡すね!」
そう言うと皇毅君は首を横に振った。
「雅からもらおうなんて端から考えてない。こういうのは男が買ってくるものじゃないのか?」
「そ、そうなのかな?私…男性と付き合ったことないからわかんないや」
ペろりとアイスを舐めた。ひんやりしていて、とても美味しい。
「お前が男と付き合ったことがあるなんて言われたら生きていけない。」
「えっ?」
ゴニョゴニョと皇毅君は下を向いて何かしゃべっていたようだった。
「何でもない。」
皇毅君はペろりと舐めた。とても冷たそうだった。
「美味しい?」
「ああ、うまい」
歩きながら食べるのはお行儀が悪いが、学校帰りにはこのスタイルが一番いい。
「なあ、雅」
「あっ!!」
ベチャッと言う音がした。地面には白い液体が散っていたりしている。
「落ち…た…」
「そのようだな」
皇毅君は冷静に、落ちたアイスクリームを見ている。
財布は忘れるし、アイスは落とすしで本当についていない。
「そんな顔するな。ほら」
「でもこれ皇毅君の…」
ぐいっと皇毅君は私の目の前にアイスを出した。
「早く食べないと溶けるぞ」
「でも…」
皇毅君の目が怖い…早く受け取った方が良さそうなので受け取ることにした。
「雅にアイスをあげられるのも幼なじみの特権だな」
「なにそれ?」
皇毅君はいや、何でもないと答えた。
アイスは本当に美味しかった。
end
20110425