あの喫茶店を見つけてから一週間がすぎた。自分の一週間は本当にあっと言う間で、このままではすぐに40、50歳になってしまうのではないかと思ってしまう。それにしてもあのコーヒーは本当に不思議だ。またあの味を求めてしまう。

「風見コーヒー入れたから少しは休め」
「降谷さんすみません・・・・・・」

 何時間もこうしてパソコンと睨んでいたら上司である降谷さんがコーヒーを入れてくれた。

「降谷さんもコーヒー入れるの上手ですよね」
「何を言っているんだ風見」

 ついに仕事をしすぎておかしくなったかと思われただろうか。けれど、確かに降谷さんの入れるコーヒーは美味しい。けれど・・・・・・何かが違う。何が違うかは自分でもはっきりとは分からない。

「また飲みたくなるコーヒーってなんでしょうかね?」
「風見、何かあったのか?」

 降谷さんは一口コーヒーカップに口づける。彼にこの間の喫茶店の話をしてもいいのだろうか少し迷う。仕事に関わる話ではないので、ここはあの話はしなくてもいいだろう。

「いえ、何もないです。では、私は仕事に戻りますので」
 
 空になったカップを洗いに行き、また自分のパソコンと向き合う。降谷さんの視線が少し痛い。いったい何を考えているのだろうか。
 そんな降谷さんもコーヒーを飲み終わり片づけに行く。自分とすれ違うときに小さな声でこう言った。

「風見、恋でもしたんじゃないか?」
「はっ・・・・・・?」

 一瞬何のことか分からなくて自分の指が止まった。降谷さんは何事もなかったかのように自分の仕事へと戻っていく。

「遊ばれただけなのか・・・」
 それにしても鼓動がうるさい。恋って・・・恋ってあの恋だよな・・・恋愛の・・・
 いったい誰が誰と・・・思いつくのは、自分と・・・誰だ?
 降谷さんはあの喫茶店の女性については知らないはずだが・・・あの降谷さんのことだ、もしかしたらと言うこともある。急に何も考えられなくなってきた。まずい、このままではいけない。とりあえず、仕事を終わらせてまたあの喫茶店に行くことを目標にしよう。

「さぁ、やるか」
 軽快なキー音とともに作業を進めていく。

20180607