名探偵コナン | ナノ


2話


ああ、ダメだ昨日のことが頭から離れなくて夜眠れなかった。昨日のことを忘れるために今日はポアロに行くべきではない・・・そう思うけれど、行かないといけない。今日は梓さんに会わないと! 

姉にもちゃんと報告しないといけないし・・・もしかすると昨日の店員さんは今日休みかもしれない・・・こればっかりは行ってみないとわからない。

・・・・・・それに、未だに店員さんの名前聞いていない。何となくだけれど、謎の多い人なのかもしれないなぁとぼんやり考えた。

「今日のラッキーアイテムはケーキです!」
毎日の朝の楽しみである、星占い。私のラッキーアイテムはケーキのようだ。ケーキか・・・帰りにどこかで買ってこよう。一人で食べるのは寂しいけれど、しょうがない。

「あっ、もうこんな時間!」

急がないといつも乗っている電車に乗り遅れてしまう。ポアロのことをずっと考えているわけにもいかない。さあ、今日も一日がんばってこよう。

そしてお昼までポアロの店員さんのことは考えないでおこうとしていたのにもかかわらず、友人とお昼を食べているときその名前を聞いてしまった。その言葉を聞いた友人は、それに便乗するように言った。

「ポアロって今女子高生に人気だよねー確か、イケメンの店員さんがいるんでしょ? 私も一回行ってみたいんだよねー」
「そ、そうなんだ!」
正直冷や汗が出た。私なんか昨日二回も行ったよ、なんて言えない。まして、そのイケメンの店員さんと二人きりでいたなんて・・・

「ま、とりあえず次の講義までの課題終わらせないとねー」
よかった、ここで話が終わって。話しているうちにボロが出るのではないかとちょっと心配した。

午後の講義が終わり、私は梓さんに会いにポアロへ向かった。
お店のドアを開けると女性の声がした。

「いらっしゃいませーあっ! もしかして、雅ちゃん?」
笑顔で出迎えてくれたのはもしかして・・・

「あの、もしかして梓さんですか?」
「雅ちゃんお久しぶり! 元気だった?」
「梓さん・・・!」

久しぶりに会う梓さんは昔とあまり変わっていなくて少しほっとした。でも、昔よりずっときれいになったと思う。

「梓さんとてもおきれいです!」
「雅ちゃんありがとう!」
本当に梓さんといると場が和むというか、ほんわかすると言うか・・・

「じゃあ、とりあえずどこでも好きなところに座っていいからね」

店内は昨日のように混んではいなかった。私は目立たない一番端っこの席に座った。

「あ、梓さん、コーヒーお願いします」
何となく目に入ったコーヒーを注文した。本当はココアでもいいかなぁと思ったけれど、大人になったんだと梓さんに思われたかった。

「砂糖とミルクはどうする?」
「ブラックで飲みますので大丈夫です!」
本当はブラックは飲めないけれど、チャレンジしてみたら飲めるかもしれない。うん、何事もチャレンジは大事だ。

「じゃあ、ちょっと待っててね」
「はい!」
よかったーちゃんと梓さんに会えて。今日もいなかったらどうしようかと思った。
ひとまず顔を出せただけでも姉は満足してくれるだろう。もしかして、また変なことを考えそうで怖いけど。

「今日も来てくれたんだ。はい、どうぞ」
「・・・・・・えっ?」
テーブルにおかれたのはコーヒーではない飲み物とケーキ。
「あの、私、ケーキは頼んでないんですが・・・」
声の主の顔は私の曇った表情とは逆でニコニコと笑みを浮かべていた。

「僕からのプレゼントですよ、雅さん」
「プレゼントっ・・・てなんですか? 今日は特別な日じゃないですよね?」

「うーんと、じゃあ、雅さんが無事に梓さんに会えた記念ということでどうですか?」
とっさに今考えましたといわんばかりの記念日だ。本当にこの人はよくわからない。
それに、マグカップにはコーヒーじゃなくてココアが入っていた。
これもまた注文とは違う品だ。

「このケーキはいつもの特製ケーキより甘さを控えめに作ってあるので、ブラックコーヒーよりもココアの方が合うのではないかと」
なんだか、コーヒー飲めないのに無理するなということなんだろうか? 

「ココアお好きでしたよね?」
「っ・・・はい・・・好きです・・・」
有無をいわさないあたり怖い気がする。圧力がすごい。

「安室さーんお客さん待ってますから戻ってきてくださーい」
その時救世主である梓さんの声がした。助かった、これで私はまた一人の時間を楽しめる・・・! とホッとしたのも一瞬で。

「本当は・・・・・・僕が気になって来てくれたのでしょう?」
私から離れる時に耳元でささやかれた一言が、死ぬほど破壊力が強かった。

「雅ちゃん? 耳まで赤いけど・・・もしかして熱でもあるんじゃ!?」
「だ、大丈夫です、これくらい・・・」
数分した後にやってきた梓さんに声をかけられてふっと我にかえった。

「すみません、ちょっと意識が飛んでました・・・」
「体調悪いならケーキをお持ち帰り用にしようか?」
「元気なので、本当に大丈夫なので食べてからすぐにお店出ますね!」
心配そうな表情を浮かべる梓さん。これ以上心配させるわけにはいかないと、私はケーキを一口、口に入れた。
ほのかに感じる甘さがとてもココアと合う。

「このケーキのお代はあむ・・・」
「梓さん、ちょっといいですか?」
梓さんが最後何かをいいかけた。なんだろう? 
あむ・・・あむ・・・アムステルダム!? いや、違うか・・・
気になるから後で来たときににでも聞いてみよう。それにしても、うまい具合にかぶせてきた気がするけれど・・・気のせいかな?

お店はだんだんと混みはじめてきたので、私はケーキを堪能してお店から出たのだった。

20180515

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