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昨日、片思いをしていた菅原君に告白をされた。最初は信じられなかったけれど、彼の真剣な眼差しに嘘はなかった。
けど・・・
「どうしよう・・・」
「なまえおめでとう!」
朝、思いの外早く来てしまって教室はガランとしていた。
溜め息混じりに呟いた。そして、それを聞いていたかのように友達が上機嫌で教室に入ってきた。
「って、あれ? 元気ないじゃん」
どうしたの? と友達は心配そうに私の顔を覗き見た。
「うん、それがさ・・・未だに夢見てるような気がして。それに、菅原君にどう接してはいいか分からないし」
「夢なんかじゃないでしょ、昨日のあんたから送られて来たメール見る?」
「え、遠慮します」
昨日彼女に送ったメールの内容は菅原君に告白されたとの報告と、後いろいろ。
「どうって言ってもねぇ・・・」
ふぅと彼女は自身の鞄を自分の机に置き、また私の所へ引き返してくれた。
「まっ、取りあえず一緒にいる時間でも増やせば恋人っぽくなるんじゃない?」
一緒にいる時間・・・か。お昼とか放課後とか・・・でも、放課後は部活があるし、毎日部活を邪魔するわけにはいかない。
私も何か部活動でもしようかな。
「放課後は図書館ってどう?」
「いいね!」
図書館は遅い時間までやっているし、何より勉強ができる。
最高の場所だ。あれ? でも、友達が喜んでいるのは何でだろうか。
「もしかして、図書委員の仕事を手伝えって言うんじゃ・・・」
ピンポーンと彼女は言った。やっぱりなとは思ったけれど、一人で過ごすよりは楽しくなりそうだ。
そして、朝のHRが始まる前にやりたいことがあった。
「清水さーん!」
私は清水さんの席に行き、まず最初におはようと挨拶をした。
清水さんは一瞬キョトンとしたが、挨拶を返してくれた。
「昨日は先に帰っちゃってごめんね」
「・・・あやまらなくてもいいのに」
え? と私は清水さんに聞き返した。
それってどういう意味なのだろうか。もしかして、清水さんは・・・
「2人とも・・・分かりやすいから」
すぐに分かったと清水さんは付け足した。じゃあ、気づかなかったのは私だけ・・・
「うん、たぶんなまえだけだろうね」
友達は清水さんにおはようと挨拶をし、私をつつく。
「みょうじ、おはよう」
「おは、おはよう!! 菅原君!」
HRが始まる数分前、廊下にあるロッカーから荷物を取ってこようと教室を出た。そしたら、肩を軽く叩かれ振り向くと菅原君の顔があった。
「お昼一緒にどう?」
「う、うん!」
断る理由なんかなかった。その爽やかな笑みが私にだけ向けられているのだと思うと恥ずかしいやら、嬉しいやら、複雑な気持ちになる。
でも、今日からそんな王子様の恋人なんだと再認識した。
20150112