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「みょうじさん・・・放課後何か用事ある?」
「ほ、放課後!? な、何もないけど・・・」
教室に戻ると、HRが始まる前で教室はざわめいていた。最初に話しかけられたのはあの清水さんで、私は焦った。もしかしてさっきのことで話があるんじゃ・・・とビクビクした。清水さんは淡々と放課後話があるから体育館に来てと言い、自分の席に行ってしまった。
今日も美しいなと私はため息が出た。
「なまえ、さっきの見てたよ」
「へぇっ!?」
変な声が出た。自分の席に着くなり友達に言われたため驚いた。さっき・・・というと清水さんとの会話していたこと? それとも・・・
「ま、まさか・・・」
「そのま・さ・か」
ガクッと項垂れる。菅原君と一緒に歩いているところを見られてしまったのか。
「絶対に彼女いるもん・・・」
「はぁ・・・あんたがいつも好きになるのが恋人持ちだからって決めつけすぎだから」
だって・・・と私は口を挟む。
「1年の時はサッカー部の斉藤君、次はテニス部の小林君、次は・・・」
「や、やめてぇ!」
これ以上は恥ずかしくて聞いていられない。
「それに中学でもそうだったんでしょ? もしかして・・・初恋もだったりして」
「もう抉らないでください・・・」
確かに彼女の言うとおりだった。初恋も酷い振り方をされ、次の恋も彼女持ちの人だった。私が好きになる人は100%そうだ。
「でもさ、菅原くん絶対になまえのこと好きだよね」
「ないないない! 絶対にないから!」
あの爽やか王子様が、私のことを好きだなんてあるわけない。そもそも私は菅原君のとは釣り合わない見た目。
「菅原君何度も教科書忘れる人じゃないし」
「ん?」
ぼそっと友達が何か言ったのは分かったが、何を言ったのかは分からなかった。でも、何故かため息をつかれた。
「もっと綺麗で背があればなぁ・・・」
「なまえは卑下しすぎなの! ちっちゃい方が可愛いんだから! 頭撫でやすいし」
そういって友達は私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
「そういえば、なまえは菅原君のどこが好きなの? あっ、顔以外でね。それと、王子様とか言ってるのなまえだけだから」
「・・・それが・・・私にも分からなくて。気づいたら好きになってたっていうか・・・その・・・ね」
自分でも分からないうちに好きになっていた。クラスも一緒になったことはないし、委員会も一緒にやったことはない。だから、接点という接点がなかった。
でも、ふと気づくと菅原君と視線が合って。その笑みにやられた。
「最初に視線感じたのは1年生の体育祭の時、かなぁ」
「その時はどう思ったの?」
「その時は笑顔が爽やかだなぁって思っただけなんだけど、それから目が合うようになって」
今じゃ目が合ったら固まってしまうほど彼が好きになってしまった。
「私はやっぱり王子様っていうなら青城の及川君だなー」
「えー・・・」
顔だけなら私も友達に賛成したい。けれど、よくわらかない人だと思う。岩泉君はいい人だと思うけど。
初恋がその及川君だったから、いい思い出がないだけなんだけど・・・ね
「あっ、もうすぐ始まるみたいだから席に戻るね」
また後で! と友達は自分の席に戻った。
「こんなに好きなのに」
放課後にならなければいいのにと重いため息をついた。
20150109