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「みょうじさん、おはよう」
登校し、自分の教室まで歩いている時に後ろから声をかけられた。その声の主は私の想い人であり、爽やか王子様だ。
朝から幻聴が聞こえるなんて、早退でもした方がいいのだろうか。
「みょうじさん?」
「っ!!」
前に回り込まれて、私は驚きのあまり立ち止まった。目の前には王子様がいた。しかも、顔が近い。
幻聴じゃない・・・!?
「あ、あの、えっと、おはよう菅原君」
き、緊張する・・・心臓がバクバク言って落ち着かない。変な汗も出てきた。
「みょうじさん顔赤いけど、体調でも悪いんじゃ・・・」
ごめんねと菅原君は私の額に手を乗せた。
「うーん、熱はないみたいだけど・・・」
心配だから保健室行こうと私の手を握った。
「え、あっ、菅原君!?」
大丈夫だからと言おうとしたが、それよりも菅原君が歩き出す方が早かった。私の手と菅原君に手が繋がれている。こんなことあってもいいのだろうか。
神様、ありがとう。これで何もいうことないです。
「先生は・・・」
と、菅原君は先生を探した。まだ先生は来ていないみたいで、私は何故かベッドに寝かされた。
「これ温度計。俺先生探してくるからここで待ってて」
渡された温度計をただジッと見た。熱はないはずだから、早くそのことを伝えなくちゃと私はベッドから降り、菅原君を追った。
菅原君は今まさに保健室のドアを開ける寸前だった。
「待ってすがわっ・・・!?」
周りのものが見えていなかった。だから、保健室によくある丸い椅子がそこにあるなんて思いもしなかった。
「みょうじさんっ!」
思いきり椅子にひっかかり、私は体制を崩した。ああ、もう最悪だ。好きな人にこんな所を見られてしまうなんて。
もう、恥ずかしくてまともに菅原君の顔見れない。
「大丈夫?」
床にダイブしたのかと思ったのに、目を開ければそこは床ではなく・・・そう、菅原君の胸の中だった。
ドラマのようなことが本当に起きるなんて、生きていてよかった。
「っ! すがっ、菅原君っ! ご、ごめんね、本当ありがとう!」
彼の胸の中は暖かくて、居心地がよかった。
「みょうじさんの体温暖かい・・・」
「す、菅原君・・・?」
抱きしめられるような形で私は頭の中が真っ白になった。今まで生きてきてこんなことされたことはなかったし、それに・・・片思いしてる人にこんなことされたら、ますます菅原君を好きになってしまう。
「ご、ごめん。つい、みょうじさんが暖かくて・・・」
大丈夫? とゆっくり彼は私から離れた。離れたくはない。けど、こんな所清水さんがみたらどう思うだろうか。絶対に誤解するに決まっている。
「私、大丈夫だから」
だからもう行ってと言いたかった。けど、言えなかった。もう少しこの時間が続けばいいのに。そうしたらどんなに幸せか・・・
彼の顔をまともに見ることはできない。
「クッキー・・・美味しかったよ」
ありがとうと精一杯の笑顔を彼に向けた。私になんか振り向かない、恋したって失恋するに決まっている。
「じゃ、今度一緒に買いにいくべ」
それなのに、どうしてあなたは私の心に入ってくるんだろう。
20150108