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「そっか・・・お兄ちゃん合宿行ったんだ」
朝起きたら仮に兄は学校に行った後だった。いつも一緒に起きて朝ご飯食べて、兄を送って二度寝をしたりしなかったりしていた。

一体いつ帰ってくるのだろうか。合宿で家を空けると聞かされた時、ショックで聞くのを忘れていた。

「もー愛朝からテンション低すぎ」

「いつもでしょ」
階段の掃除を黙々としている中友達が頬を膨らませて言ってきた。私はまともに答える気はなくてただ合宿に行ってしまった兄のことばかり考えていた。

「もしかしてお兄ちゃんに彼女でもできたー?」
「なっ! そんなわけないじゃん!そんな・・・そんなことあるわけ・・・」
お兄ちゃんからそう言った話は聞かないし、今は部活のことを一番に考えているわけだし、彼女なんて、彼女なんているわけない。

「愛動揺しすぎ」
「だ、だってお兄ちゃんに彼女なんて・・・」
ハァともう1人の友達にため息をつかれた。

「ブラコンこじらせすぎでしょ。そこが治れば愛もモテモテなんだろうけど」
「私彼氏とかいらないし、お兄ちゃんとほのぼの暮らしたいだけだし!」
うわぁとあからさまに引かれた。何か間違っていただろうか。

「縁下、ここ汚れてる」
うわぁ・・・振り向きたくない。絶対あの人だよ。本当、この間からどうしたって言うんだ。
話しかけないでくださいって言って分かったって言ったのに。

「縁下聞いているのか」

「ほら愛、牛島先輩が聞いてるよ」
友達の顔には後で詳しい話し聞かせてねと書いてあるように見えた。

「牛島先輩、話しかけないでくださいって私言いましたよね?」
渋々振り向き、私は2つ上にいる先輩を見上げた。

「・・・・・・一応心に留めておくとは言ったが?」

コイツ・・・と私は先輩を軽く睨んだ。ふと思いついたのは、先輩に嫌われるようなことをすればいいんじゃないかということ。
先輩はこの学校の有名人だし、仲良く話してる所や一緒に話しているところを見られたら、めんどくさいことになりそうだ。

ただでさえ学年一位をとり続けていて、寄ってくる人もいるって言うのに。

「昨日もあそこまでしてやったじゃないか」
「なっ!?」

友達の顔はパッと明るくなり私と先輩を交互に見ていた。勘違いしていそうで、誤解を解くのが大変そうだ。

「先輩、その話は後でゆっくりしましょう」
「ちなみに言っておくが、普通合宿と言えば土日にやるんじゃないのか?」
「え?」

一体いつから先輩は私たちの話を聞いていたのだろうか。
ああ、でも今はそんなの関係ない。

「まだ金曜日だし、まだお兄ちゃんと・・・」
そこまで口に出し我に返った。まだ先輩が目の前にいると言うのに、何てことを口走ってしまったのか。
あっ、でも、友達と同じようにドン引きするだろう。
そしたら、これから私に話しかけるということはしなくなるだろう。

「それでは縁下、この隙間を綺麗に掃除しておけ」

「・・・・・・は?」
先輩はここと埃がたまっている隙間を指差した。

「えっと、あの牛島先輩?その前に言うセリフがあるんじゃ・・・」
「何のことだ」

真顔で先輩は答えた。あっ、さっきの私の呟き聞こえてなかったのかな?それにしても、友達は固まっているし、たぶん聞こえたと思うんだけど。
「・・・・・・? よく分からんが俺は行くぞ」

そう言って先輩は下へ降りていった。

残された私達はその姿が無くなるまで見ていた。

20141006


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