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「愛ー今日スーパーで特売やってるから買ってきてくれない?」
手が放せないのと母は付け足して、キッチンから私を呼んだ。ちょうどお風呂掃除が終わり、自室へ行こうと思っていたところだった。

「いいけど、何を買ってきたらいいの?」
「砂糖と醤油お願い」
お財布は鞄の中に入ってるからと椅子の上に置いてある青い鞄を指さした。
一体何を作っているのやら。この頃母はお菓子づくりにハマっており、日に日にレベルが上がっていっている。

「じゃ、行ってきます」
帰りにお兄ちゃんに会えないかなーとスーパーまでの道を歩きながら考えていた。

「でも、まだ帰ってこないか・・・」
たまには一緒に帰りたいな。他愛もない話をして笑って帰りたい。
そんな平凡な願いもあまり叶ったことがない。

思い出してみれば、兄と一緒に帰ったのっていつだっただろう。
中学までだったかな・・・
中学もバレー部に入り、私はパソコンクラブという名の帰宅部だった。体育館の隅からから見る兄はとてもかっこよかった。

スーパーに入り、目当ての物を買った。お一人様各2つまで。じゃあ、2つずつ買おうとかごの中に入れた。
かごの中はズシッと重くなり持っているのも辛くなってきた。
会計を済ませ外に出る。夕焼けと伸びた影。

「重すぎ・・・」
特に醤油が重かった。こんな事なら一本ずつにすればよかったな、なんて今更後悔しても遅いのだけれど。

家まで遠いなー
行きは兄のことだけを考えながら来たためそんなに遠いとおもうほどではなかった。けれど、帰りは何も考えられなかった。

「オイ」
後ろから男性の声がして立ち止まろうと思ったが無視して歩くことにした。
こんな重いものを持ちながら面倒なことはしたくない。
それに、その声に聞き覚えがあったから尚更振り向きたくない。

「オイ、待て」
待てと言って素直に待つ人がいるのだろうか。私は絶対嫌だけど。

「袋破れてるぞ」
「えっ!?」

私は思わず手に持っていた袋を見た。破れてなんかいなかった。

「せっかくだから持ってやる」
何その言い方、有名人だからって偉そうに。
牛島先輩は私の手からスーパーの袋を奪った。

「別に持ってもらわなくても結構です」
私が奪い返そうとすると、軽く交わされる。

「お前が持って歩いた所でいつ家に帰れるんだ。明日になるぞ」
さらりと嫌みを言われた。
それには返す言葉もなかった。

「・・・・・・それより先輩はどうしてここに」
「ロードワーク中でお前を見かけて声をかけたまでだ」
「今日初めて会った人に易々話しかけるなんて意外に先輩チャラいですね」
そう言うと牛島先輩は首を傾げた。

「それもそうだな・・・」
何だこの人。チャラいと言う言葉とは程遠い硬派な先輩が悩んでいる。

「インパクトがあったからだな」
は? と口に出してしまった。
つい、本心が出てしまう。何だか調子狂うな。

「インパクトも何もあんな少しの会話で何言ってるんですか」
先輩と話したのはたった数分。それだけの時間でどんなインパクトを与えてしまったのか。
あの時ボールなんか取るんじゃなかった。

「牛島先輩、これからは私を見かけても気安く話しかけないでくださいね」
「何故だ」
何故ってめんどくさいからですよ、とは言えずただため息をついた。

「牛島先輩は有名人ですから」
「よく分からんが一応心に留めておこう」

一応って・・・この人本当によく分からない人だなと思いつつ自宅の近くになり、先輩にお礼をして帰った。


20140930


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bkm