俺は三年生になった。先生はもういない。代わりのトレーナーは来月から来ると監督は言っていた。
「あ、すみません!」
「俺が取ってくる」
後輩が外に出したボールを取りに外に出た。
目の前には肩で息をしている女子生徒がいた。
「そのボール取ってくれないか」
「これ?」
女子生徒は俺の顔をジッと見ていた。俺は早くと手で急かすが動かない。仕方がないので、おいと声をかけた。そうすると、女は渋々俺にボールを渡した。
「ああ、もしかして有名な牛島先輩でしたか」
何を言うのかと思えば、そんなことか。どうせ、ファンでしたとかいつも応援していますと言ってくるのだろう。
「……それがどうかしたのか」
だから、いつものように冷たく返事をした。
「いえ、別に。ただ、兄と比べていただけですからお気になさらず」
俺の予測を斜め上に行く人間が居るとは思わなかった。
「別に気にはしないが、とげとげしいその言い方をどうにかしないか」
「私、バレー部じゃないんで」
女は俺を敵だと思っているのか分からないが、妙にトゲトゲしていた。
面白いなと単に興味が湧いた。
「名前は何だ」
「……縁下です」
それじゃと彼女はその場を去った。
縁下、そう彼女は言った。
「縁下愛か・・・・・・」
あれが先生から目をかけてほしいと頼まれた少女。
なるほどと、俺は部活に戻った。
20141117