シリーズ | ナノ

 4.食べちゃうぞが冗談に聞こえません

一生懸命彼のことを思い浮かべて作ったお菓子。喜んでくれるかなー

「これ、食べてくださいっ!!」
「・・・・・・何かの罰ゲームか」

彼は眉を一つも動かさず言いはなった。しかも場所は彼の教室。教室内に笑い声が広がる。それ、私が罰ゲーム受けてるんじゃ? と今の状況を見て思った。

「酷いよそれ!」

せっかく家でマフィンを作ってきたのにその言い方って・・・はっ! まさか遠回しのほめ言葉なんじゃ?

「気持ち悪いその笑いはなんだ」

「気持ち悪いって・・・今日の若様は毒舌すぎるんじゃないの?」
いつもならもっとオブラートに包んだ表現か、むしろ無視してくれるんじゃないの?
え? 今日は牛島若利毒舌デーなの?
それって誰得なの・・・あっ、私かー

「昨日何となくマフィン作りたくて作ってみました」
何も変なものは入ってないから大丈夫と彼に言ったら、そうかと返事をした。そして、パクリと一口食べた。

「ど、どうかな?」
自分的には上手く作れたと思うんだけど・・・彼の口に合うだろうか。

「・・・・・・美味い」
「ほ、本当? 後で”冗談だ”とか言わない?」

彼は私のことをちらりと見たが、またマフィンにかじりつく。自分の作ったお菓子を大好きな若様が食べてるなんて・・・夢のようだ。
嬉しすぎて目から水が出てきた。

「意外に料理は上手いんだな」
意外にっていう言葉は余計だが、素直に嬉しいし、できればお嫁さんにしてほしい。食べちゃいたいくらい彼のことが好きなんだ・・・・・・

「今、寒気がしたのだが・・・油井変なこと考えただろ」

「えっ! べ、別に食べちゃいたいくらい好きとか思ってないから!」
「冗談には聞こえないのが怖いところだな」

そういって彼は箱に入ったマフィンをもう一つ手にとり頬張る。その姿が何だか可愛くて、写メ撮って待ち受けにしたい。

そう言えば私、結構好きって言ってるけど彼はどんな風に思っているんだろう?
バレー一筋だから恋愛ごとには疎そうだし・・・ただの引っ付いてくる女にしか見えてないのかな。
それでも、嫌われてないのなら今はそれでいいの、かな・・・・・・

20140717

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