▼ 1.スキンシップじゃなくてセクハラです
「あー・・・やっぱり牛若の体はいいなあー」
同じクラスの牛島若利の腕の筋肉とか、足の筋肉とかすごく逞しくてつい、さわりたくなってしまう。私の悪い癖だ。でも、それは牛若限定の話で、他のバレー部の人間は興味が湧かない。
「・・・・・・離れろ」
牛若は私を振り落とすように、まるで邪魔な虫を振り払うように体を揺らす。
「それは・・・ム・リ!」
チッと牛若から舌打ちが聞こえた。いいねーその舌打ち、ぞくぞくしちゃう。それとその瞳・・・
いいね!
「もっと蔑んでください、お願いします」
「・・・・・・このくだりを毎日やる気か?」
頭がおかしいんじゃないか? と冷たい目で私を見る。その目いいよ、凄く。
「え、当たり前じゃん! 私、牛若のそのドSな態度凄く好き」
「それは褒められていると解釈していいのか?」
「褒めてる、褒めてる。あと、白鳥沢の中で一番かっこいいよ」
牛若はピタリと動きを止め、私をじっと見た。
「・・・俺は過剰なスキンシップは好まない」
うん、そうだね、知ってた。だって見た感じ一匹狼っぽいし、俺様について来い的な感じだし、ベタベタされるのは好きじゃなさそう。
でも、私は好きなんだよ。牛若のこと。本当は若利って名前で呼びたいのに、恥ずかしくて言えない。
こんな乙女心、牛若には分かんないだろーなー。
「だからこれはスキンシップの一環ってことで」
そうして私はまた牛若の腕を触った。この鍛え抜かれた筋肉最高!
そしてまた、腕を振り払われる。
まったくそんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。
「お前のやってることは過剰なスキンシップだ」
離れろと言いながら牛若は私から一本後ろに下がった。
「えーそんなに嫌だった?」
「嫌とかそういう問題ではないだろう。油井は女で、俺は男だ。だからだな・・・」
牛若の説教って長いんだよねー・・・さすがバレー部主将。
説教してるところもかっこよく見える。話は流して聞いているが。
「夢子がやってるのってスキンシップじゃなくてセクハラだよね」
「確かに、そうかも」
雪だるまの呟きが私の耳に入ってきた。
でも、何だかんだいって牛若も楽しそうに見えるけど気のせいかな?
ま、これがいつもの日課って言うのもあるけれど。
「分かった、分かった。ほら、次の授業選択だから行こうか」
「本当に分かったのか? オイ、待て話はまだ終わってな・・・チッ」
私は彼とは別々の授業を選択しているので今日は無事に逃げ切ることができた。
201407011
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