▼ 0日目番外編
その日、出席番号の近い男が俺に話しかけてきた。
「なあ、牛島。来週の日直変わってくれないか?」
「別に構わないが……何かあったのか?」
男は口をもごもごさせ、言いづらそうにしていた。補習にでもなってしまったのか、それとも部活動や委員会活動のためだろうか。
「俺、バイト始めたんだ」
バイト? と俺は男に尋ねる。アルバイトは基本的には禁止だが、先生達の許可が降りれば自由にできる。
俺は部活が忙しくてとてもじゃないけれど、アルバイトはできない。
「初めてできた彼女の誕生日プレゼントを買いたいんだ。だから、短期でバイトを始めたんだ。な、牛島このとーり!」
男は俺に頭を下げた。まさか、ここまでされるとは思わなかった。もしかして、そんな理由だから俺が怒るとでも思われているのだろうか。
「別に俺はそれでもいいが……相手は誰だ?」
日直と言えば、二人一組で行う。相手は誰でもよかったが、欲を言うならば仕事が早いパートナーがいい。それなら部活にも支障は出ないだろう。
男から相手の名前を聞いて、すぐに探した。相手は後の席で楽しそうに話をしていた。
「もー夢子ってば」
「わ、笑わないでよ!」
そして近くには困った顔をしている油井さんの姿があった。困った顔の後、すぐに笑顔になり笑っていた。
何故だかその笑顔に引きつけられた。
しかし、今まで一度も話をしていないし、どこか避けられているような気がする。
そして、日直初日。黒板に書かれた当番の名前を見た。そこには自分の名前と油井さんの名前が書かれてあった。
「油井さん、おはよう」
日誌を取りにいき、固まっている油井さんに挨拶をした。どこか距離が離れていて目も合わせてくれなかった。
こんな調子で一週間も過ごすのかと少し憂鬱でもあった。しかし、彼女がなぜ自分と距離をおくのか聞いてみるチャンスでもあった。
20141102
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