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練習が終わり、私は片づけに追われていた。ふと隣を見ると烏野のマネージャーさんと目が合った。一生懸命モップをかける可愛い子は私を見て何故か驚いていた。
「あっ、ご、ごめんね」
驚かせてしまったと思いとっさに謝ってしまった。
「す、すみません……」
烏野のマネーシャーの子も私に謝り、その光景を見て私は笑ってしまった。それにつられて彼女も笑った。
「名前教えて貰っていいかな?」
「烏野高校1年、谷地仁花と申します! よろしくお願いします」
「私、音駒高校2年利根川藍。よろしくね!」
仁花ちゃんと握手を交わし、モップをかけながらいろいろな話しをした。例えば、烏野高校のもう一人のマネージャーさんのこととか。
美人で要領がよくて、オーラに華がある烏野のマネージャーさん。一度でいいからお話をしてみたい。
「私も仮マネージャーじゃなくて本当のマネージャーになりたいな」
そう呟くと仁花ちゃんは驚いていた。
「私、仮マネージャーなんだ。転校してきたばかりだし、バレーの経験もないし……でも、黒尾先輩やバレー部の皆に認められるように頑張ろうと思ってるんだ」
マネージャーになったばかりの時と比べてもできることも増えたし、部員から頼られることも多くなった。
「藍先輩、一緒に頑張りましょう!」
「ありがとう仁花ちゃん!」
ほのぼのとした空気が私達の間に流れる。
「……掃除終わった?」
「はい、もう少しで終わりそうです」
体育館の中に入ってきたのはあの烏野の美人マネだった。近くで見ても美しくなにも喋ることができなかった。
「潔子さーん!」
そして、外から賑やかな声が聞こえ、潔子さんと呼ばれた美人マネージャーは体をびくりと震わせていた。
この声は……と私は声の方に体を向け、声の正体を探した。外は暗く、心もとない光が私を照らした。
「あっ、やっぱり……西谷君!」
「利根川じゃねーか!」
その声の主は西谷君だった。その隣には縁下君がいた。
「利根川さんお久しぶり」
「二人とも覚えてくれてありがとう」
そういえば、田中君の姿が見えない。一体どこに? と聞こうとしたが、それより先に西谷君が私に話しかけた。
「まさかこんな所で会うとはな!」
「もしかして利根川さんってどこかのマネージャーなの?」
縁下君は私に問いかけた。私は音駒のマネージャだと二人に話した。二人は驚いたような顔をしていたが、西谷君の顔は驚きの顔から喜びの顔へと変わった。
「音駒にマネージャーはいないって聞いたけど……」
「そんなのいいじゃねーか! 良かったな利根川!」
そう言って西谷君は盛大に笑いながら私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「私まだ転校してきたばかりだから仮マネージャーなの…って西谷君やめっ」
私の髪の毛が乱れ、縁下君に止められるまでそれが続いた。
「でも、良かったな利根川」
「ありがとう西谷君!」
二人に私がまだ正式なマネージャーじゃないことを話た。
「でも、利根川さんが幸せそうでよかったよ」
ホッと安堵する縁下君。そして私の肩にポンと手を置いたのは西谷君だった。
「じゃ、明日もよろしくな利根川」
うんと私は大きく頷き、二人と別れた。
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