二日目
転校初日、私は昨日練習した通りの自己紹介をした。当たり障りのないことを言っただけだが、私が遠い所から転校してきたと言うこともあり、休み時間は机の周りを囲まれた。
私はあることを隠すためにゆっくりと言葉を選びながら話す。そうしなければ、うっかり方言が出てしまう。
最初の転校場所では方言を隠さなかったので弄られることも多く、辛い毎日を送った。
二回目の転校先では方言を隠そう必死になった。その結果、どこか他人行儀で親しい友人ができなかった。
そして三回目の転校先である音駒高校。父はやっと東京本社に戻ることができ、これ以上転校はないと言った。
出身地に近いこの東京に来れたのは嬉しかった。
私の訛りもだんだんと標準語になってきたが、気を許すとすぐに言葉が出てきてしまう。
でも、隣の席になった彼が私に言ったんだ。
「おれは訛っててもいいと思うけど」
その言葉一つで救われた気がした。
彼は私と同じゲームが好きで静かで、気が合いそうだった。
そんな彼と友人になれそうだ。だから・・・
「研磨君は部活入ってるん?」
「・・・突然、なに?」
ただ、何となく聞いてみたかっただけ。
今まではいつ転校があるか分からなかったため、入ってはなかった。
先生にも部活の紹介はされたし、一度入ってみてもいいかもしれない。
「……バレーボール」
「バレーやってるん!?」
私が大きな声を出した為か研磨君はピクリと体を震わせた。驚かせてしまったようだ。
「やっぱり驚く・・・よね。おれ小さいし」
「小さくなんかないよ! 私よりも大きいし。それにバレーは繋ぐスポーツでしょ? この新作のゲームの内容だって”繋ぐ”がテーマなんだよね?」
「……そうだけど」
転校二日目の今日、研磨君とはゲームの通信対戦をして遊んでいる。
「部活かー…私もどこかに入ろうかな」
とぎれとぎれの会話だけれど、心地よく感じてしまう。研磨君はゲームの画面をずっと見ている。
「あっ…あーあ、また研磨君の勝ちか」
これで何敗目だろうか。まだ女子の友達がいないので、私はゲームをしながらご飯を食べる研磨君を横目に一人で食べた。残った時間で、研磨君を対戦に誘って今に至る。
「利根川さんっていろいろ惜しいよね」
「惜しいって?」
ここと私のゲーム画面を指差し、パーティの特性などを細かく話してくれた。
「なるほど…つまり私は…ゲームが下手ってことだね」
そう…だね、と研磨君は頷いた。
「ゲームは下手だけど、やるのは好きだからさーゲーム部とかってないかな?」
さらっと紹介されただけだからもしかしたら…?ということもあるかもしれない。
「……ないと思うけど」
「そっか、残念……あっ、もうすぐ授業だから電源切るね」
予鈴が鳴り、私はゲームの電源を切った。
20140702
戻る