勉強
梟谷との合同練習が始まり、私は梟谷のマネージャーさん達と一緒に練習を見守っていた。
区切りが良いところで、ひとりの先輩があることを聞いてきた。
「藍ちゃんはマッサージとかってやったことある?」
「無いですけど・・・・・・音駒の皆のために頑張ります」
先輩が言うには意気込むような難しいことじゃなくて、筋肉を解すようなものらしい。
「じゃあモデルが必要だけど……」
周りを見渡し目に付いたのは朝助けてもらった赤葦君だった。最初はさん付けだったが、同い年だからさん付けはしなくていいと言われた為、赤葦君と呼ぶことにした。
「どうかしたんですか」
「赤葦君にお願いがあるんだけど、マッサージの練習台になってくれないかな?」
先輩がそう言うと赤葦君はなるほどと納得し、床に座った。
「じゃあ、藍ちゃん赤葦君の太ももをこうやってゆっくりと……」
先輩は赤葦君の太ももを持ち私にやり方を優しく教えてくれた。一通り解説が終わり、私が実際にやってみることになった。
「赤葦君、下手だと思うけど頑張るから」
痛かったりしたらすぐに言ってねと付け足しマッサージを始めた。
たどたどしい手つきに赤葦君は無言だった。
顔を見上げると、赤葦君はコートとは反対の壁際をジッと見ていた。
「やっぱり下手だったよね、ごめん」
「いや、うん、良い感じだと思うけど……視線が」
視線? と私はコートの方を見るそこには何とも言えない表情を浮かべている猛虎君とリエーフ君がいた。そして、その後には面白そうに笑う黒尾先輩と、ただひたすら壁打ちをしている研磨君の姿があった。
「赤葦君なんかごめんね、練習に戻って」
先輩は申し訳なさそうに赤葦君に言った。彼は「はい」と言って立ちあがり
私に一言頑張れと言ってくれた。
「ありがとう、赤葦君」
コートに戻る前、じゃと私の方を振り向いてくれた。
「赤葦君って凄く紳士的ですね」
「あー、まあね」
と苦笑いを浮かべ大きな声でスパイクを決めている木兎さんを見ていた。
「へいへい、そこの新人音駒マネ!」
「は、はいっ!」
先輩と一緒に木兎さんを見ていると遠くから呼ばれた。私の声が届いたかは分からないが、大きく手を振っていた。
なので、私も大きく手を振った。
「利根川さん、別に無理して真似しなくてもいいから」
「え? あっ、研磨君! お疲れ様。今すぐドリンク持ってくるね」
「ううん、いいよ。今は……」
研磨君は何かを言いたそうにしていた。ドリンクじゃないとすると、タオル? それとも次の球出しをしてほしいってことかな?
うーん、どれにしても言いにくいことじゃないし、どうしたのだろう。
朝もどことなく様子がおかしかったし、体調でも悪いのだろうか。
「藍せんぱーい!」
ドッと後から抱きつかれたのはやっぱりリエーフ君だった。
「藍先輩、さっそくマッサージしてください!」
キラキラした目で私を見下ろした。その目には叶わないなと、私はリエーフ君を座らせさっき教えてもらったことを実践する。
「それで、研磨君は……あれ?」
「先輩どうしたんすか!」
さっきそこにいた研磨君の姿はなかった。
「研磨なら外だ、後で声かけといた方がいいと思うぜ」
黒尾先輩はドリンクを飲みながらそう言った。なるほど、それならマッサージが終わり次第すぐに探して話をしてこよう。
研磨君が心配だ。
20141009
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