「なんで藍ってマネージャーになったの?」
部活に行く前に友子に言われた。急なことだったので、返事をするのに数秒遅れてしまった。

「私転校ばっかりしてたから部活動とかあんまりやったことなくて、これ以上転校はしないって言われたから何かやってみようかなって。バレー部なら研磨君もいて心強いし」
「でも、藍なら文化部でもよかったんじゃない?」

最初は確かに急だったが、やると決めた以上仮のマネージャーから正マネージャーに昇格したい。
マネージャー業は華やかに見えて、地味な仕事が多い。まだ部員に手伝ってもらうことが多いため、まだまだだなと感じる。

「じゃ、私も部活行くね。藍頑張ってね」
ありがとうと私はお礼を言い、友子は部活に向かった。友子は料理研究部という部活に入っており、その部活の部長を務めている。

「私も行かないと」
マネージャーが皆よりも遅く体育館に行くわけにはいかない。一番先に来ているのがいいのだが、日直だったり、HRが終わるのが遅いとなかなかそうもいかない。
私は急いで部活に向かった。

部活が終わり、私は片づけをしていた。皆がわいわい片づけをしてくれるので、すぐに終わる。これで、最後にモップがけをする。さすがにこれだけは一人でやることにしている。
皆片づけが終わると私に一声かけ帰っていく。私は皆のその顔が好きだ。
練習終わりのあの清々しい顔を見るだけで明日も頑張ろうという気持ちになる。

「利根川さん、おれも手伝うよ」
「え、いや、いいよ! 研磨君も疲れてるでしょ? だから、早く帰ってゆっくりした方がいいよ」
「俺はちょっくらコーチと話があるから校門前で待ち合わせな」

黒尾先輩が研磨君にそう言い残しコーチとどこかに行ってしまった。
さっきの言葉の意味はいったいなんだろうか。待ち合わせ……?

「今日……三人で帰ろうって」
モップをもう一本持ち研磨君は私の隣に移動する。

「三人? 私と研磨君と黒尾先輩ってこと?」
私はいつも一人で帰っている。何か大事な話しでもあるのだろうか……

もしかして、マネージャーに向いていないから辞めてくれ、とか……

「たぶん、利根川さんが今考えているようなことじゃないから、そんな顔しないで……」
「……研磨君」

どうして私の思っていることが分かったのだろうか。研磨君の優しい言葉に元気が出た。
二人でのモップがけはすぐに終わった。

私たちは約束の校門前で黒尾先輩を待った。黒尾先輩はすぐに来た。

「それで話って……」
「お前、マネージャーとしてもっと上に行きたいと思わないか?」
私は黒尾先輩の隣で歩き、研磨君はその後を歩いている。

「もっと……上……に」
はい! と私は黒尾先輩の顔を見ながら返事をした。

「よし、決まりだな。じゃ、来週梟谷と練習試合に参加だな」
黒尾先輩はそう決まれば連絡しないとなと走って先に行ってしまった。きっと連絡をしに行ったのだろう。

「良かった……ね、利根川さん」
「う、うん……」
私は梟谷学園高校のことを研磨君に聞きながら家に帰った。



20140828


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