家に帰れば君がいた
家に帰れば君がいた。
どんなに仕事で遅くなっても、冷めたおかずがテーブルに並び、ゆめみは待ちくたびれたようにテーブルに突っ伏して寝ている。
まれにソファで体育座りで寝ていたりちっちゃく丸まって寝ている時もある。
そんなとき俺は言うんだ。
「ありがとうゆめみ」って・・・・・・
仕事が忙しくなったのはつい最近で、出世をして部下がついた。そのことが一番の原因だと思う。けれど、どんなに遅くなってもゆめみは泣き言言わずこうして俺のことを待っててくれる。
「ゆめみ」
ソファで丸くなり寝ているゆめみの髪を指で触った。前髪を上げれば、泣いた跡があることに気づいた。
その跡にそっとキスをした。やせ我慢して、寂しいの一言も言えずに俺を待っててくれた。
「う……ん? 力? お帰りなさい」
ゆめみは重い瞼をゆっくりと開いた。
「ただいまゆめみ」
「あっ・・・今おかず暖め直すね」
とゆめみは立ち上がりキッチンへと急ぐ。
俺はゆめみを追いかけ、手を洗うゆめみを後ろから抱きしめた。
「どうしたの?」
ゆめみは少し驚いたような声を出した。それもそうだろう、俺はあまりベタベタしないタイプだし、甘えるのも苦手だ。
「週末、会社から近いマンション探しにいこうか」
そう言うとゆめみはえ? と俺の方を振り向く。
「ゆめみに寂しい思いはさせたくないんだ」
俺は今まで以上に強く彼女を抱きしめ、彼女の方も抱きしめ返してくれた。
彼女は泣き出し俺の胸の中で泣いた。着替えていないので、シャツが彼女の涙で濡れてしまった。
不快感など何もない。この涙は俺のせいだから。
「力大好きだよ」
「・・・・・・俺も」
ゆめみの体は俺よりも小さくて、ずっとずっと守っていきたいと思えた。だから、ゆめみに言うんだ。
「俺とずっと一緒にいてください」って
20140725
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