二口君の観察


あの青根に彼女が出来たらしい。あの青根にだ。しかもその彼女は可愛い。狙っている奴も多かったし、告白した男もいるだろう。彼女は派手すぎでもなく、家庭的な雰囲気を持った女子だった。

彼女の周りはふんわりとした空気が漂い、彼女と近くにいるだけで癒された。

そんな彼女が・・・青根の・・・彼女なんて

2人は昼休み教室にいた。見たところ口は動いていない、ただ机には紙が置いてあり2人はペンを持っている。

(筆談!?)


なんか喋れよ青根!
夢が丘さん可哀想だろ・・・って笑顔だ。しかも若干顔が赤い。どんな会話・・・じゃなくて筆談してんだ。凄く気になる

この距離じゃ何書いてあるのかは見えない。こうなったら青根に話しかけてこようか。

「青根ーちょっといいか?」

「あっ、二口君」


一番先に振り向いたのは青根じゃなくて彼女の方だった。少し焦り顔であったが、青根はいつもと同じように冷静だ。


「さっきから二人で何してたんだ?」
「「!!」」


二人して驚きの表情を浮かべていた。青根の表情は他人から見たらわかりにくいだろうけれど、俺には分かる。


「もしかして二口君見てたのっ!?」

カァッと顔をさっきよりも赤く染める夢が丘さんの顔がなんだか新鮮で可愛かった。ふと周りを見渡すと、チラチラと夢が丘さんの顔を見る男子生徒と目があう。気まずい。


「おい、青根。何の筆談してたんだか知らないけど、こういうのは家でやれ」

青根に周りを見ろと目で訴えた。それに気づいたのか、あいつは見渡し男子生徒を怯えさせる。


よし、それでいい。しかし、こうやって二人が並んでいるところを見ると美女と野獣、いや兄妹のようだ。主に身長。


青根は191センチで彼女は150センチほどしかないので、まずこの二人が付き合っているなんて思う人はそうそういないだろう。


「あっ、もう時間だね・・・・・・」

コクリと青根はうなずき、彼女は少し寂しげに自分の席に戻った。


20140708



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