待ち合わせ


今日は私の彼氏である牛島若利とデートだ。

「ごめん遅れちゃったー……ってあれ?」

待ち合わせ場所の駅には彼はいなかった。珍しいこともあるもんだなと壁に寄りかかり、彼を待った。しかし、10分経っても彼は来ない。さすがに心配になってきた。あの顔怖い、かなり時間にはうるさそうな彼が遅れるとは……何かあったに違いない。

「すまない、遅れた」

「私も今来たところだから大丈夫だよ。それより何かあったの?」

壁によりかかり、ぼーっと通り過ぎて行く人達を見ていたら、声をかけられた。声の主は若利だった。
彼はいつもの練習のおかげか息切れ一つもしていないし、汗もかいていない。

「……その服似合うな」
「え、えっと……ありがとう」

私の服をジッと舐めまわすように見た後、彼の口からは甘い言葉が出た。今まで何も言わなかったのに、急にどうした?いや、嬉しくないわけじゃないけど……何だか調子が狂う。

「それで、何かあったの?」
「……洋服が決まらなくてな」

は? え? 洋服? ちょっと何を言っているか分からないんですが。
あのバレーボール馬鹿の若利が洋服が決まらなかったから遅れたって……笑うしかない。

「確かにっ、今日の洋服はかっこいいねっふふ」

笑いが、笑いが止まらない。若利は不機嫌な顔をしている。ダメだ、こんなところで爆笑したら奇異な目で見られてしまう。

「すーはー……ふー……」
「笑いすぎだゆめみ」
「ごめん」

確かに今日の若利はかっこよく決まっている。いつもはラフな格好なのに、今日はどことなくファッション雑誌を参考にした服装だ。髪の毛とかすごく決まっている。

「今日の若利もかっこいいけど、私はどんな若利でも大好きだからね」

真剣にバレーに取り組む若利とか授業中の若利とか、部活で疲れているのに毎日私を家まで送って行ってくれる優しい彼。世界で一番大好きな、私の自慢の彼氏だ。

「そうか、そう言われると照れるな」

顔を赤くした彼が私に向けて手を出した。私はその大きい手を取り、一緒に歩きだした。



20140529
カップルシリーズいいなぁ



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