振られて始めて気付く恋 ss


「ごめん、お前のことそういう風に見れないわ」
「そっ、か・・・」

分かった、ごめんねと私は彼に謝った。彼はヘラヘラした笑みを浮かべ、最後に言った。

「俺がお前とつき合うとか本当ないでしょ」
じゃあなと言い残し、彼は校舎の中に入っていく。私は、ただ泣くだけだった。
どうしてだろうと今までのことを振り返る。あんなに仲良く話していたのに、どうしてこんな事になったのだろう。

ずっと前から好きだった憧れの人。だから、今年一緒のクラスになれて嬉しかった。それに、たくさん話すようにもしたし、お菓子も作った。

もしかしたら、私は彼にキャーキャー言っている女子の1人にしか過ぎなかったのだろうか。

「ゆめみ・・・」
「孝支っ」

木の陰から出てきたのは同級生の菅原孝支だった。私達は入学してからずっと同じクラス。
時には笑い、励ましあった。彼は親友とも呼べる人だ。

「私、振られたんだ」
精一杯の笑顔を彼に見せた。

「うん、見てた」
孝支は私の瞳に浮かぶ涙をハンカチでぬぐい取った。

「そっか・・・ごめんね、変な所見せちゃって。でも、どうしてここに?」
彼は心配そうな顔をして私を見た。
私はどうして孝支がここにいるのか不思議でたまらなかった。
ここに来るまで誰ともすれ違わなかった気がしたのに。

それにこの場所は校舎から少し離れたところにある。このままでは次の時間の授業に間に合わない。もうお昼休みが終わりそうだ。

「ゆめみが心配でつけてきたから・・・俺の方こそごめん」
「そう、なんだ・・・」

その優しさが逆に今は辛かったりする。今はただそっとしておいてほしい。

「こんなときに言うは卑怯かもしれないけどさ・・・・・・俺、ゆめみのことが好き、なんだ」
「えっ・・・・・・?」

急に抱きしめられ、私は身動きができなくなった。でも、孝支に抱きしめられているのは嫌じゃなかった。むしろ、心地よく感じた。

「すぐに恋人になってほしいなんて言わない。けど、俺ならゆめみを泣かせたりしない。約束する」
「孝支っ・・・」

その言葉が心に染みた。
「孝支・・・ありがとう」
さっきまであんなに雨が降っていた私の心は、一気に晴れた。


20141224



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