いつもと変わらないロードワーク。俺の後ろを着いてくる者はいなかった。
この時間は人通りもあまりなく走りやすい。しかし、今日はスーパーの袋を両手に持つ人をちらほらと見かける。
話に花を咲かせながらゆっくり歩くお婆さんや 、立ち止まり小声で話し込むおばさん。そして、目の前にはよろよろと不安定に歩く女子高生の姿があった。
彼女は考えることに夢中になり、前が見えていない状態だった。
どうしても彼女から目を離すことができず、ペースを落として後ろを走る。
その女子高生があの時見た彼女に似ていたからかもしれない。自分のことなのに女々しく感じてしまう。
「っ、え!?」
彼女は段差をあることに気づかず体勢を崩した。俺は頭よりも先に体が動き走って彼女の壁になった。
「大丈夫か」
「っ! あ、あの、ありがとうございます・・・・・・」
恐る恐る目を開け俺を見上げる彼女は確かにあの時のものと同じだった。だから、どうしたと言うのだ。
「怪我がなければよかった」
俺はこれ以上関わらないようにと彼女からさっと離れ走った。
「っはぁはあ……」
学園に戻り、水道で顔を洗う。鼓動が早くまだ収まりそうにない。落ちつけ、落ちつけと頭にも水をかぶせる。遅れてやってきたメンバーには不思議そうな顔をされた。
それにしてもあの制服は烏野高校。おかしな速攻を使うチームがいる高校だ。
「……?」
違和感を感じるなとジャージのポケットに手を入れてみると、そこにあったのは
「○の素のコンソメ……」
しかも固形タイプのものだ。何でこんなものが俺のポケットの中にあるんだ。
もしかして、彼女の買ったコンソメが俺のポケットに入ったのかもしれない。
これは偶然か、それとも必然か。
出来るなら、これ以上俺の心をかき乱さないでほしい。
20140527