今日はスーパーで特売があると言ってバレー部の練習につき合うのを断った。
そもそも私はバレー部のマネージャーではないのだから毎日のように手伝う義理などはない。
けれど、体育館で皆と一緒に体を動かしているととても気持ちがいいし、何より青春を感じていられる。
それに、もしかしたらあの人に会えるかもしれないと言う淡い期待を抱いている。
「はあ、それにしても買いすぎちゃったなあ・・・・・・」
確か醤油やみりんがあまりなかったなあと思い出し、今日は安いから買っちゃえ!と勢いだけで買ってしまった。
それを後悔したのは会計を済ませ、袋詰めをしている時だった。
「誰か連れてくれば良かったな」
特売だから部活には行かないと澤村に言ったら凄く心配そうな顔をされたのはこの事を予知してなのか・・・・・・
澤村だけでなく、スガにも心配された。潔子はもう何も言うまいという顔をされた。さすが友達。
私のことを私以上に分かっている。
確か前にも同じことをしたような・・・・・・
「っ、え!?」
そんなことを考えながら歩いていたら段差があることを忘れていて体勢を崩してしまった。両手にはスーパーの袋、もうこれは素直に転ぶしかない。
「・・・・・・?」
痛くない。あれ? 私、段差を踏み外して転んだんじゃないの?
それに、地面ではない何かに寄っかかっている気がする。
「大丈夫か」
「っ! あ、あの、ありがとうございます・・・・・・」
恐る恐る目を開けるとそこには逞しい体があって、急いで離れたらそこには鋭い目つきをした男性がいた。
「怪我がなければよかった」
それじゃあと彼はそのまま何も言わず背を向け走り出した。
「・・・・・・あの人」
もしかしたら、あの人は私が会いたかった人なのではないだろうか。
ここからではもう彼の姿を見ることは出来ない。
名前だけでも知りたいし、今日のお礼とか・・・・・・迷惑かもしれないけど。
それでも私は彼と仲良くなりたい。
「まただ・・・・・・」
まただ、また同じ失敗をした。ジャージにプリントしてある文字をよく見ておくんだった。
「また、ここ通るよね」
そこは自分の住むマンションの近くの通りだった。
20140526