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軽快な音楽が流れる。だが、その音楽は私の耳にはあまり入ってこなかった。

「で、いったいどうしたのよ」
「佐和子……」

あれから泣きながら佐和子に電話をして、ファミレスに来てもらった。涙はもう出なかった。

「恋人に悪いって…」
私は佐和子にすべてを話した。佐和子は驚いていたがだんだんと暗い顔になっていった。

「ななこさ、もしかして誤解されるような所見られたんじゃないの?」

「誤解されるようなこと?」

何だろうか。買い物は一人で行っているし、帰る時も仁花ちゃんとかと帰ってるし…

「ななこ、この間澤村君と一緒に帰ったんでしょ? それじゃない?」

「あっ!」
そうだ、それだ。でも、誤解されるようなことなのかな。

「あのね、あんたが澤村君と友達として見ていることなんて牛島君には分かんないんだよ。それに、他校で、しかもバレーの練習で忙しい牛島君がどうしてななこを映画館に誘ったと思う?」

佐和子の目は真剣で、私は彼女の言葉を理解するのに数分かかった。やっとの思いで理解できた時、佐和子は大きく頷いた。

「ま、これも経験ってことで新しい恋でも探そう! ね、ななこ」
「新しい恋を探すのはちゃんと牛島君に振られてからだけどね」

この恋は実ることはない、でもこの気持ちを彼に伝えたい。そして、きちんと彼の口から返事を聞いて諦めたい。

「ななこは小さいし、可愛いからすぐにできるよ」
「他人事だと思って…佐和子、ありがとう」

親友なんだから当たり前でしょと佐和子は笑った。私もつられて笑った。


やることは決まったが、どうやって彼に気持ちを伝えたらいいのか。メールをしても電話をしても返事は来ないだろうし。彼を呼びだす手段が無い。

「待つしかない」

あの道はバレー部のロードワークに使われているようで、あそこで待っていれば彼に会えるかもしれない。でも、彼が主将で練習メニューを変えられる立場にいたら、会えない。

でも、待つしかない。

20140628


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