あれからメールは帰ってきていない。私は携帯をベッドの脇に置き目を閉じた。まぶたの裏には彼の顔が浮かぶ。声だけでもいいから聞きたい。それが叶ったらどんどんと欲望のまま願いが増えて行き彼を困らせる。
若利君は優しいからきっと叶えてくれるのだろうけど……でも、さすがに彼女でもなんでもない私にそこまではしてくれないか。
・・・・・・もう考えるの止めて寝よう。
彼のことを考えたらきりがない。明日も学校があるので早く寝よう。
学校での授業中、ふと窓の外を見る。今頃どんな授業受けているのだろうか。学校ではそんなことを考えていた。
そんな毎日が続き、金曜日になった。ぼーっとしてることが多くなり佐和子や澤村、バレー部の皆に心配されることもあった。
佐和子には告白しかない!とまで言われたが、そんな勇気なかった。
メールの返信だって来ていないのに、できるわけない。
「来ちゃった」
部活の手伝いは休みになり、家には寄らずあの場所に近い公園に来た。
6時を知らす音楽と、使ったものを片付け始める子どもたち。
私はその様子をブランコに乗りながら見ていた。
鼻孔を擽るのはカレーの匂い。いつもはお腹が空く時間なのに、今日は食欲がわかない。
それからどれくらいの時間が過ぎただろう。いつの間にか私の周りには誰もいなくなっていた。子どもたちの声もカラスの声も何も聞こえなくなっていた。
辺りは真っ暗で、この世の中に1人取り残されてしまった気分だ。
ぼーっとしながら大通りを見た。 誰かと
目があった。
あれは・・・・・・その人はじっと私の方を見て固まっている。その内私の方に歩みを進めた。
「・・・こんな時間に1人か?」
「あっ・・・・・・」
ライトに照らされその人の顔がわかった。私は声を上げた。
「夢野さん」
「えっ?」
彼は私のことを名字で呼んだ。名前で呼ぶって言ってたのに・・・一気に彼との距離が離れた気持ちだ。
「あの、わ、若利さんあの・・・・・・」
「無理して俺の名前を呼ばなくていい。それに、恋人に悪い」
彼は私の方を見てくれなかった。声も冷たくまるで拒絶されたよう。
「恋人ってどういう・・・」
彼は何も言わず背を向け、足早に去っていった。
私はその場に崩れ落ちた。
20140627