11
目覚めは最悪だった。ガタッと大きな音がして気づいたらベッドから落ちていた。しかも携帯を握りしめながら。

「痛い・・・・・・」

目を開け周りを見渡す。そこは普段と変わらない自分の部屋。無駄に広いこのマンションの一室で私は生活をしている。

自分でも女の子らしくない部屋だと思う。何せ家具などはほとんどない、ただ寝起きをするだけの部屋だからだ。
勉強はリビングでやっている。本当は両親と住むはずだったのに、私が烏野高校に受かりさあ新生活だ! と心ときめかせていた矢先、父の海外出張が決まった。

元々出張が多かったので、最初は深刻には考えてなかった。けれど三年〜五年の長期だと言う。

マンションは借りてしまったし、家具だって新しい物に大体は揃えていた。
母は父に着いていき、私は残った。

「どうしよう・・・・・・」
まさかこんな気持ちになるなんて思いもしなかった。
携帯画面には牛島さんのプロフィール欄が映っていた。
私はベッドに寝転がり携帯画面を眺める。

彼から渡したい物があると言われ、明日会うことになった。明日何を着ていこう。どんな話をしよう。
不安で不安で堪らない。それに、彼の顔や声を思い出せば鮮明に思い出せる。

これは俗に言う恋なのではないだろうか。
憧れから恋に変わるのはよくあるベタなことだ。

「手大きかったな・・・」
緊張してあまり覚えてないが、大きな手だった。

「あっ、タオル!」

そうだ、タオル借りたんだった。洗って返さないと・・・・・・それと、明日着ていく服。どんな服が好きだろうか? 

それより、渡したい物とは何だろうか。

「デートみたい・・・・・・っ!?」

いやいや、ないない。そんなことある訳ない。でも・・・もしかしたらってこともあるかもしれない。
自惚れてもいいだろうか?

「ま、そんなわけないか」
彼は雲の上の人、私なんか平凡すぎて眼中にもないだろうし。
彼がなんと思っていようが、私は彼との時間を大事にするだけだ。

「起きて買い物に行ってこようー」

よし、今日は服を買ってこよう。仁花ちゃんでも誘おうかと思ったが、バレー部のマネージャーなので無理だろうな・・・

他の友達も用事があるとか言っていた。

あまりセンスはないが、勝負服とやらを買ってこよう。

20140611


prev next

戻る