どうして彼女は泣いていたのだろうか。
いつもの公園で見つけた彼女はブランコに座りながら俯いていた。隣にいたのは器用にブランコに乗る猫。その姿はまるで飼い主を心配しているように見えた。

夢野さんを見つけ彼女に話しかける。部活が終わり走ってきたということもあり息は上がっていた。いつもはこんな距離じゃ息も安定していて楽なのに、今日は足が重かった。

月島に聞いたあの話。小さい頃一緒に遊んでいたという話が俺の頭からこびりついて離れない。
俺が気にする必要なんてどこにもない。けれど、やはり気になってしまう。

彼女はブランコに乗りながら泣いていた。騒ぎ立てるような声を上げるのではなく、ただ静かに涙を流していた。
彼女を照らすのは心許ない街灯。それだけでも、彼女の泣いている顔がはっきり分かった。

「・・・・・・これ」
俺はバックの中から今日はあまり使用していないタオルを彼女に渡した。
これ以上彼女の泣き顔を見るのは辛かった。それに、胸の鼓動が心なしか早くなった気がした。


「これ、夢野さんのだって聞いたから・・・っ、部活終わった後走ってここに来たんだ」
俺は無くさないように財布の中に保管していた御守りを夢野さんに渡した。
それを見た瞬間、彼女の顔がパッと明るくなった。

「・・・これっ、本当に・・・影山君ありがとう!」
夢野さんはいきなり俺の手を握った。ドキッと胸が高鳴る。彼女の手は小さくて、暖かかった。俺は息さえまともにできたかどうか分からない。それぐらい緊張した。

「本当にありがとう」
にゃーんと猫が鳴き、まるで猫が俺にありがとうと言ったような気がした。

「・・・おう」
もしかしたら、夢野さんは月島のことが好きなのではないだろうか?何となくそう思っただけなのに、俺はそのことが気になって仕方がなくなる。
聞きたくても聞けない。俺はそのまま彼女と一緒に帰った。


20141214


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