放課後になり、影山君は物凄い速さで教室を出て行った。
席替えで影山君と隣の席になり、一週間経った。
影山君はだいたい授業中は寝ていたり窓の外を見ていたり何かをジッと考えていたりしている。

チラリと彼の方を見ればシャープペンシルを持ちながら上手く寝ている時があった。その時はジッと彼の寝顔を見てしまった。普段の彼とは違い、あどけなさが残っていた。

ふと、教室を見渡せば私以外誰もいなくなっていた。ついさっきHRが終わったような気がしていたが、ボーッと影山君について考えていたらかなり時間が経っていたようだ。

じゃあ、私も帰ろうと鞄に持ち帰るものを入れる。何となくポケットに手を入れ、あるものを探した。

「お守りがない・・・」
ありとあらゆる所を探したがどこにもお守りがなかった。
あれは昔祖母から貰ったもので、猫の刺繍が施してあるものだった。

もしかして、体育館に移動したとき落とした・・・・・・? 今日は五限に学年集会があり体育館に移動した。
私は鞄を持ち、体育館までの道のりを目を凝らしながら歩く。

けれど、どこにもお守りは見つからなかった。誰かに拾われたのだろうか。目の前には体育館があった。体育館の周りをぐるっと一周してから、今日は帰ることにした。

体育館からは元気な声が聞こえる。声の主は一年一組の日向君のようだった。
ちらりと体育館を覗き見た。そこである人と目があった。

「あっ、月島君久しぶり・・・だね」
「ななこ……夢野さん、この学校だったんだ」
うんと頷き、ぎこちない会話をする。どうやら今は自主練中らしく、奥の方ではサーブの練習やスパイクの練習をしていたりとワイワイと練習をしていた。

彼とは幼馴染のようなものだったが、私が学区外に引っ越してしまったため、それっきり彼とは会っていなかった。私が彼と同じ高校だということは入学式の時に知った。月島君は私のことは忘れてしまったのだろうと思っていた。だから、覚えていてくれて単純にうれしかった。

「月島君、あのさ・・・明、じゃなくてお兄さん元気?」
「……まあ、それなりに元気なんじゃない」
彼は気だるげに答えた。

「そっか……じゃあ、練習頑張ってね」
私は彼の練習を邪魔しないために話しを切り上げた。彼はボールを持ちながら小さく頷いた。
私はそれから体育館の周りを歩くが、見つからなかった。



***
「王様、何してんの」
「拾ったんだよ」

俺は一番最初に体育館へ着くため走っていた。体育館近くであるものに目が止まり、立ち止まった。
拾ったのは猫柄のお守りだった。
俺はそれをポケットにしまい、後で先生にでも届けておくことにした。

「それ夢野さんのじゃん」
「……そうなのか?」

月島は真顔でそうと呟いた。どうして夢野さんのだと断言できるのだろうか。

「夢野さんとは小さい頃一緒に遊んでたからね」
月島は俺の考えていることが何故分かったのだろうか。月島はそれだけ言うと練習に戻っていった。

「会ったら聞いてみるか」
今日もあの場所で会えるだろうか。



20140904

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