朝練が終わり俺は夢野さんを探した。いない。おかしい、もうすぐ朝のHRが始まってしまうと言うのにもしかして休みだろうか?とキョロキョロと目を動かした。

「お、おはよう」

「あっ・・・」

隣から声が聞こえ、それが夢野さんのものだと気づいたのは挨拶されてから数十秒後だった。

どうして隣の席に座っているのだろうか、俺は不思議に思った。昨日までは廊下側の席だったような・・・・・・違ったか。

「影山君の席って・・・・・・あの、前と変わらないんだね」

「席?」

ああ、そうだった。そう言えば昨日は席替えをしたんだっけ。昨日の猫があまりにもインパクトがあり、席替えをしたことを忘れていた。

「あ、あのっ影山君、こ、こ、これからよろしくね!」

「あ、ああ・・・よろしく」
顔を真っ赤にしながら夢野さんは言った。変な奴だなとは思ったが、とりあえずあの猫のことを詳しく聞きたかった。

「昨日の猫のことなんだけど」
「ね、猫っ!」

びくりと彼女の体が震え、周りをキョロキョロと見た。先生でも来たのかと思ったが、教壇には誰もいなかった。

「えっと、昨日の猫は私のペットでいつも散歩に連れて行くんだ・・・」

散歩が大好きなんだと彼女は嬉しそうに言った。なるほど、散歩が好きな猫か。そう言えばテレビか何かで見たことがある。

「また触らせてもらってもいいか?」

「い、いいけど・・・大丈夫かな・・・」

「何が?」

何でもない! と夢野さんは大きく手を振った。何が大丈夫なんだろうか。

「今日も昨日の時間か?」
「え、あ、うん。大体あの時間に外を散歩してるけど」

あんな夜遅い時間に猫と散歩って危なくないのだろうか。
もしかしたら、毎日一緒に帰れば猫に懐かれるのではないだろうか、俺はそう考え夢野さんに昨日の公園で待ってて欲しいと告げた。

彼女は固まってしまい、返事も聞けずに朝のHRが始まってしまった。


20140604



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