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それは濃い霧がたっていた夜だった。路地には誰もいなく、人々は皆、誕生会に行っていた。今日はある有名企業会長の70歳の誕生日であった。
ななこはその孫としてその会に出席していた。
だが、挨拶周りで気が滅入ったのかななこは、母に少し外の空気を吸ってくると言い残し会場の外に出た。
会場の周りは明るいが、少し歩けば暗闇の中に入ってしまう。
「私に光は似合わないわ」
自分がこの家を継ぐのではないし、どうせ自分は政略結婚の道具とされるに違いない。
もう、生まれた時から決まっているようなものだ。
光は二人の兄、そして私は闇。女は日陰で生きていく。
外国の小説には女性が活躍している小説がいくつもある。
それなのにこの国は遅れている。外国に留学していかにこの国が遅れているのか痛感した。
ななこはあの路地を曲がったら会場に戻ろうと足を進める。
路地を曲がろうとした時会場の方から叫び声と人々のざわめく声が聞こえた。
ななこは驚いて足を止めた。
だが、路地から誰か急ぎ足で出てきたためななことぶつかった。
思い切りぶつかりななこはよろめいた。
「ッチ!邪魔だ」
街灯がチカチカ光る中、照らすのは全身黒ずくめの男であった。顔を半分黒い布で隠している。
ななこはその格好を見て呟いた。
「Oh!Ninja!」
その言葉を聞いた男は目を丸くし、ななこに手を貸してくれた。
「……日本人ではないのか。すまなかったな」
それだけ言うと男はスタスタと歩いて行った。その姿をななこはボーっと見ていた。
そして家に帰ってもずっとななこは夢見心地であった。家族はななこの異変にはまったく気付かず、騒ぎについて警察と話していたりした。
「あれが夢見ていた忍者……素敵っ!」
ななこはうふふと絵本を抱きしめながらベッドでゴロゴロと悶絶を繰り返す。
絵本には英語が書かれており、表紙に忍者の絵が描いてあった所を見ると、忍者に関する本だと分かる。
「まだこの国にも忍者がいるなんて!」
ああ、素敵と顔を赤く染めながらななこは眠りについた。
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