TVの中からは女性の黄色い声が聞こえてきた。
【「さ、お待ちかねのゲストを紹介しましょう。今をときめく名探偵ロキさんです!」
そのアナウンサーの声と同時に出てきたのは赤いスーツを着たロキだった。会場内は女性の悲鳴で五月蠅い。ロキは笑顔で観客に手を振る。】
「ロキ君嬉しそうだよねー満更でもなさそうだし」
「ん? ああ、その番組ね。どうしても出てほしいってTV局に言われて断れなかったんだ」
ロキはTVをチラリと見ただけですぐ新聞に目を通し始める。ロキは今をときめくイケメン名探偵だ。依頼は簡単なものしか受けていなかったはずだったのだが、いつの間にか口コミでいろいろ広まってしまった。
あの怪盗フレイに勝っただとか、警察からも頼りにされているだとか……まあ、本人はあまり気にしている風ではないが。
特集を組まれたり、今日のように番組のゲストとして呼ばれることも多くなった。
「ロキ君、ちゃんと寝てるの?」
「うん、まあほどほどにね」
繭良はTVを消し、ロキの方を向いた。最近彼は忙しすぎていつ寝ているか分からない。繭良が遊びに来ても外出でいないか、仕事で何か考えていることが多い。闇野が言うには机の上で寝ていることが多いと言う。
繭良は来るたびにロキを心配していたが、それと同時に遠い存在になってしまったんだと思えて泣きそうになる。
「……私、もう帰るね。ロキ君の仕事の邪魔になるだろうし」
繭良は静かにソファーから立ちあがり、部屋から出ようとした。
「嫉妬した?」
「えっ?」
繭良は振りかえりロキを見た。ロキは真剣な目で繭良を見つめる。
「だって最近繭良、僕の出てる雑誌とかTVをわざわざ僕の前で見てるからさ。それに、その時の繭良の顔……」
「私の顔がどうしたの?」
ロキは新聞を置き、繭良に近づき顔を引き寄せ強引にキスをした。
「可愛い」
「っ!!」
繭良の顔は真っ赤に染まり、石のように動かなくなってしまった。
「僕だって嫉妬するよ、君のクラスメイトだとか、フレイとかフレイとか……僕以外にその顔見せちゃダメだからね」
「こ、この顔って?」
ロキは分からない? と言ってまた繭良と顔を近づける。
「その物欲しそうな顔とか、頬を赤く染めた顔とか……全部かな?」
ロキはクスリと笑った。繭良は顔を真っ赤にしながらロキの胸を叩いたけれど、彼は手を離そうとはしない。
「これから雑誌・TVの依頼は断るつもりだから、心配しなくてもいいよ」
だから、そんな顔しないで? とロキはまた繭良の唇を奪う。
何度口づけを交わしたのか数えていないが、繭良は疲れ切ってしまっていた。ロキはクスクスと笑みをこぼし繭良を抱き上げる。
「心配させてばかりでごめんね、繭良」
そして運ばれた先は……?
20140128
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