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「はあ、今日も疲れたな……ななし、おやすみ」
 そして彼は私の頬にキスを落とし夢の中に入ってしまう。仕事が忙しいのも分かる。けど……

「寂しいです、正さん」
 私は倒れこむように寝てしまった正さんの眼鏡をゆっくり外し、ベッド脇にあるテーブルに置いた。そして私も正さんの隣に潜り込む。もう、正さんは夢の中なのかうんともすんとも言わない。ただ、寝息だけが規則正しく聞こえる。

「はぁ……」

 辛い、正さんは辛くないのだろうか? 私はこんなにもあなたを渇望しているのに。新婚の時のように私を求めてくれなくなってもう何か月も経つ。私の体はこんなにもあなたを求めているのに……

「っ……ぁあっ…ん、んっ、正さ、ん……あぁあっ!」
 一人で自分を慰めた後はさっきよりも悲しい気持ちになる。私の手は自分の愛液でびしょびしょ。その手をティッシュで拭き、丸めてごみ箱に入れる。

「誰かに相談したがいいのかな……」
 でも誰に相談したらいいだろうか? 同性の友達に相談するのは何だか気が引けるし、じゃあ誰に相談したら……
 私はその晩相談する相手のことを考えた。

***
「今日も遅くなる。後はよろしく頼んだぞ」
「はい、正さんいってらっしゃい」

 正さんを送りだし、私は部屋に戻った。今日は確か勇様と茂様が休みだったはず……その二人なら人生経験も豊富だろうし、私に的確なアドバイスをくれるはず。さっそく二人を探さないと……うーん、でも朝からこんな話をするのはちょっと……

「どうかしたのななしちゃん?」
「あっ、茂様……少し相談に乗ってほしいんですが今大丈夫ですか?」
「今? うん、いいけど」

私はばったり茂様に出会い、そのまま茂様の部屋に移動した。そこにはなぜか勇様も居た。

「何だ、ななしか。何の用だ?」
「勇兄さんはもう用件は済んだでしょ」

 茂様は椅子に優雅に座っている勇様にそう言った。だが、勇様は動こうとしない。

「お二人に聞いて欲しいんです……正様のことで相談に来ました」

 そう言うと、勇様は椅子から立ちあがり大声を出した。
「何っ! 正のことだと! それは何だ、早く言わぬと斬るぞ」
「まあまあ、勇兄さん落ち付いて」

 茂様は急いで勇様をなだめ椅子に座らせた。
「ななしちゃん? もしかして正兄さんに嫌なことでも言われたの?」
「いいえ、正さんは私のことをとても愛してくれています。けれど、あの……」
「惚気なら聞かぬぞ」

 やっぱり恥ずかしい。でも、せっかくだから意見を聞いてみたい。ここは勇気を振りしぼって言うしかない。

「夜の、あの……営みが…この頃まったくなくて、私……」
「そうか貴様達はセックスレスと言うことか」
「勇兄さん、もう少し口閉じててもらえる?」

 茂様が満面の笑みを浮かべながらそう言うと、勇様は黙ってしまった。

「正はこの頃人事のごたごたで大変らしいな。レスになるのもしかたがあるまい」
「だから勇兄さんは黙って……まあ、そのごたごたが片付くまでは難しいかもね。ああ、そうだ、これななしちゃんにあげる」

 茂様が私に渡したのは大きな箱。それには大きな赤いリボンがついている。中には何が入っているのだろうか?

「開けてみるがいい」
「……はい」

 私は勇様の言う通り箱を開け、中身を見た。そこには……

「なっ! こ、これは……」

 黒くて少し透けているブラジャーと紐? この紐がもしかしてショーツの代わりなの?
こんなの恥ずかしくて着れない……

「俺が愛人に着せようと思って買ったのだが、逃げられてしまってな」
「いらなくなったからって俺に押しつけられたってわけ。これ着て正兄さんを待ってれば? 効果絶大だと思うけど」
「効果絶大……」

 ごくりと喉がなる。これを着て正さんに……

「ありがとうございます! 勇様っ」
「別に俺はもういらないからな。煮るなり焼くなりなんでもしろ。それではな」

 勇様はさっと部屋を出ていった。私も茂様の部屋を出て自室へと戻った。

 でも、まじまじと良く見ると……すごく卑猥。今日は気合を入れて体を洗って整えないと……


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