Let's dance with my blue dress. [ 1/21 ]
私に縁談をしろと父は言った。来てしまったかと鬱になる。私にはやりたいことがあったのに。
私には自由がないのはこの家に生まれたときから知っていた。絵本や小説の中の自由な恋愛にあこがれても、私には絶望しかない。
私は父のため、この家のために結婚をするのだ。
「ななしです。」
「残念だが、私は当主になるまでは結婚しないと決めている」
縁談が始まってすぐ、何を言うかと思えば断りの話だった。父はどうかお願いしますと頭を下げている。
正様は仕方ないと私と少し話をすることになった。
「お前は結婚したいのか」
「いえ、私はまだやりたいことがあります。なので、断っていただきありがとうございました。」
正様は意外そうな顔をしたかと思えば、私の頭をなでた。
私と正様は二周りほど年齢が離れている。だからなのだろうか?それとも撫でやすかったのだろうか?
眼鏡の奥の瞳が優しかった。
「そうか、まあ頑張ることだな。」
「あのっ、私今度の舞踏会で青いドレスを着ようと思っているんです!だから、私を見つけたら踊って頂けないでしょうか」
正様は私がその舞踏会に出席したらなと言い、父様に見つからないように帰って行った。
どうしてあんなことを言ってしまったのだろうか?
正様が帰ったあと、思い出すたびに胸が苦しくなる。私は・・・恋に落ちてしまった。
そして宮ノ杜主催の舞踏会。正様に言った通り青いドレスで着た。正様はどこかと探していると舞踏会も最後になってしまった。
これだから宮ノ杜家は広くて嫌だ。それにいろいろな方から踊りましょうと声をかけられる。断れるはずない私は愛想笑いを浮かべて踊るしかない。
「あれは・・・正様と・・・」
・・・誰、だろう
綺麗な人と仲よさげに踊っている。
胸が苦しくて辛くて、どうしたらいいかわからずホールから出た。
「あんな楽しそうな正様初めてみた」
涙が止まらない。私ではあんな風に正様を笑わすことができない。きっと私では役不足。
この青いドレスは私の心の色。
「忘れなきゃ、あの人の目には私は映らないんだから」
私に振り向くことは一生ないだろう。
だから、これからも青いドレスで踊る。
20130311
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