酒場は騒がしく、酒を飲み過ぎてできあがっている客もいる。地べたには酒瓶を抱えながら寝ている大男、酔って適当な客を捕まえて説教をしている客、様々だ。
皇毅は酔っぱらいに捕まらないようにして香蘭を探した。一通り店をみたが香蘭は見あたらない。もしかしたら、急にこれなくなったのかもしれないと皇毅は思い店を出ようとした
「皇毅様・・・?」
「・・・誰だ」
皇毅の目の前には綺麗な着物を着た女性が立っていた。香蘭かと思ったが似ても似つかないほどの美人だった。
「ふふ、私をお忘れですか?」
女は口元を隠し笑った。皇毅は必死に記憶を巡らせるが、こんな女には会ったことがない。
「さあ、こちらです」
「あ、ああ・・・」
どこかの姫なのか見当もつかなかったので皇毅は無礼のないように慎重に行動をした。
女に手を引かれ着いたのは奥の席で出入り口からは死角になるような場所だった。
「まだわかりませんか、私のこと・・・」
「すまない」
「そうですか、でもきっと分かりますよ」
女は人差し指を唇につけ、楽しそうに笑った。
その時、店に大男が二人入ってきた。その大男は誰かを探しているのか周りをキョロキョロしている。皇毅はその大男を見て何か思い出そうとしていた。
「だいぶ早かったわね・・・」
「は?」
この女はなにを考えているのかと皇毅は不思議に思ったが口には出さなかった。大男は苛立ちはじめ、大声を出したり椅子を蹴飛ばしたり客に絡み始めた。
店主は止めに入ったが、歯がたたなかった。客は混乱し逃げまどう人でいっぱいだ。
「オイィ、その女顔見せろ!」
「・・・こっちよ」
大男の一人が女に気づき近寄って来た。
女は立ち上がり皇毅の腕を引っ張った。大男は周りをけちらし近づく。女は皇毅を引っ張り、机の下にある小さな扉を開けその中に皇毅を突き飛ばすように入れ、自分も中に入った。
「オィイイイ兄貴イイィ外に逃げやがったぜえええ」
「外をくまなく探すぞ、来い!」
大男たちは店を出て外を探しに行った。店はもぬけの殻で店には店主が倒れていただけだった。
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