「長官も意外とああいうの見るんですね」
「たまたまだ、それと用が済んだらさっさと行け。まとわりつくな、鬱陶しい」
皇毅は煙たそうに秀麗を見たり、手で追い払うが秀麗は目を輝かせている。その理由は昨日の一座の公演の後の出来事を秀麗は後ろから見ていたからである。
そう、彼女の目には仲良さそうに話す志才と皇毅にしか見えなかった。一体この二人がどうやって出会ったのか秀麗は気になって仕方がなかった。
気になったのは彼女だけではなく、その場に居た蘇芳も清雅も疑問に思ったことには違いない。
ただ、この二人は秀麗とは違い疑問には思っても直接本人に聞くのは躊躇った。
「面倒だ」
いつも以上に冷たく接するが彼女は折れない。困ったとふと外を見ると香蘭が居た。
秀麗もそのことに気づき、志才様と叫んだ。
その声に気づいた香蘭は振り向き手を振った。そして、皇毅がいることを知った。
「こんな所で君と会うとは。もしや、逢い引き中だったかな」
「ま、まさか!私昨日舞台を見て志才様の魅力に取り付かれてしまって、その・・・握手してもらってもいいですか?」
秀麗は皇毅を押し退け、香蘭の前に出た。
香蘭は苦笑いをしながらも、快く握手をし、最後には頭を優しくなでた。
秀麗の顔は真っ赤に染まり、縮こまってしまった。
「皇毅の頭も撫でてやろうか?」
「いらん、それよりどうしてここにいる」
なんだそんなことかと香蘭は後ろを指し示した。後ろには大きな袋や箱が置いてあり、それを守るように強面の男二人が立っている。
「見ての通り王に呼ばれて舞や笛を演奏しに来たんだ。美蘭は今日一人で舞台だから、美蘭はいない。残念だったね」
「別にいてもいなくてもどっちでもいいんだが」
またまたーと香蘭は皇毅の腕をつついた。その意味が理解できない皇毅はただ立っているだけだった。
「美蘭のこと好きにならない男はいないからね」
「だから私は美蘭だか言う小娘のことはどうだっていいと言っているだろうが」
「あれ?そうなの。ま、今はってことにしておくよ」
香蘭はそう言うと皇毅から離れ、強面の男二人に合図を出した。男たちは頷くと荷物をもち歩いて行った。
「それじゃあ、お嬢さん失礼するよ。それとまた舞台に見においで」
秀麗ははいっ!と元気よく返事をした。
「皇毅もいつでも待っているよ。」
と言い秀麗に気づかれないように皇毅に紙を渡した。秀麗は嬉しそうに小走りでどこかに行ってしまったのを見届けてから、皇毅は紙を見た。
紙には綺麗な文字で”今夜一座に近い酒場で待っている”
と書かれていた。
20130105
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