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「外に出たいのは分かる、もう少し字が読めるようになったら連れていってやるから待っていろ」
二人が帰って来たのはもう10時を過ぎていた。皇毅が一羽を見つけ少し説教したあと、お腹が二人とも空き、近くにあったファミリーレストランで夕飯を食べた。
なんだかんだいいつつ、皇毅は一羽の良い保護者になりつつあった。
「あれ?皇毅様、これ落としましたよ!」
皇毅の鞄のポケットから落ちたのは、くしゃくしゃになったあのチラシ。皇毅からの返事がなかったので一羽はゆっくりとチラシを開ける。
「綺麗・・・」
うっとりと一羽はそのチラシを見つめる。その視線の先には花火の写真があった。
「行きたいのか」
「はいっ!行きたいです!」
一羽は元気よく返事をし、皇毅はふぅと息をついた。
「元気だけが取り柄だな、一羽は」
皇毅にそう言われても一羽は花火大会に行きたくて仕方ないようだ。
皇毅は一羽の手からチラシを取り上げた。一羽はそのチラシを取り返そうとジャンプをしたりするが、まったく届かない。
「条件がある」
「条件?ですか」
皇毅はそうだと頷き近くにあったドリルをおもむろに取り、一羽の前に出した。
「このドリルをすべて書き直すこと、それと絶対に一人で歩かないこと分かったな」
それを聞いた一羽は真新しい紙にドリルの文字を書き始めた。
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