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【今月末には首相官邸で…はーい皆さんこんにちは!今日から英語のレッス…】


「……えいご?しゅしょう…?」


この“てれび”から流れてくる声には私の知らない単語がたくさん出てくる。
本当に違う時代に来てしまったんだなと実感させられる。

「勉強したいな…」

小さい頃は漢文を勉強したいと父上に言った覚えがある。そうしたら怒られてしまった。


「皇毅様、勉強してもいいでしょうか…あれ?皇毅様?」


見回しても、皇毅様の姿はなかった。なんだか急に心細くなってきた。

てれびはそのままにして、私は皇毅様を探して辺りを見渡す。


「皇毅様…どこですか?」

最初に入った所は棚があって、その中に平たくて丸いものや、四角くて持ち手があるものなどがたくさん入っていた。

そして次に見つけたのは水桶?だった。その中には水があり、その上に浮かぶ箸があった。

「これは何だろう?」

私の目をひいたのは銀色をした棒のようなもの。何をするものなのか見当がつかなくて、その棒を下に押した。


「うわぁっ!」

水が勢いよく出てきてびっくりした。いまだに水は出続けている。いったいどこに井戸があるのだろうか?
そう不思議に思って、下を覗き込んだ。
出っ張りを引き、中を覗き見た。

「水が無い…」

いったいどうなっているのだろう?いったいどうやって水が出るのだろうか?

「あっ!冷たいっ!」

なんだろうと上を見上げてみれば水が溢れていた。

「ど、どうしよう…」

どうしたらこの水は止まるのだろうか。

「と、とりあえず蓋を取らないと」

確か、蓋がしてあったはずだと私は大きく息を吸い水の中に顔をつけた。



***

二人分の食材を手に持ち、家まで歩く。ちなみに調理しないで食べられるもの(一羽が明日食べるためのもの)と今日の夕飯の材料を買った。今日の夕飯は焼魚とサラダとみそ汁だ。
とりあえず、一羽のあの栄養失調のような体をなんとかしてもらわなければ。


【えー明日の天気は晴れて、暑くなるでしょう】

家の中に入れば聞こえてくるテレビ音。まだ見ていたのかと、半ば呆れたが、気をとりなおしてリビングに入った。


「………何をしているんだ」


「と、止まらなくて…」

何がと聞かずとも、見れば分かった。この惨事をどうやれば引き起こすのか。

「こうやるんだ」

水を止め、一羽に一回練習をやらせた。

キッチンマットは濡れ、床は濡れ、ため息が出た。


「この際だ、洗濯機の回しかたくらいは教えておくか」

一羽に紙とボールペンを持たせ、風呂場へ向かい、厳しく一羽に教えた。





20120521

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