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一羽に自分が持っている服を渡し、別室でTシャツに着替えさせている。とりあえず、自分が思いついた名前を受け入れてくれてよかったと思う。

「皇毅さまー!これってどうやって着るんですか?」

バンと開かれたのはリビングへつながるドア。そして飛び込んできたのはシャツをただ頭からかぶっただけという一羽の姿。

「手をここに通すんだ」

そういうと一羽はなるほどと言って脱ぎだした。

「ここで脱ぐな!」

怒るが、一羽は気にした様子もなくただニコニコと笑っている。
からかっているのか?と思ったが、それはなさそうだ。

一羽と接していると何だかまるで、歳の離れた妹を世話しているような気分になる。


「とりあえず服は明日買ってくる。とりあえず一羽は…って人の話くらい聞け!」

さっきまで居た一羽が居なくなっていた。

「皇毅様っ!この箱に人が!人が中に居ますよ!」

リモコンを一羽が足で踏んでしまったのか、テレビがついていた。
一羽はかなり驚いたようで、テレビの周りをうろうろしている。

「これはテレビと言ってな、こうやると」
「うわあぁっ!変わった!」


どうして?どうして?と一羽の目が訴える。このテレビがもし、3Dテレビだったら一羽はどんな反応をしたのだろうか。

「とりあえず、買い出しに行ってくる。一羽は…」


テレビに興味津々で、まったく話を聞かない一羽。仕方ないと思い、一人スーパーに向かった。





スーパーに向かいながら、悶々と一羽のことを考える。一体これからどうなるのだろうか?


「一羽は一体いくつなんだ」

20以上?まさかそんなわけないだろう。まだ年端の行かぬ娘だろう。まだ、13くらいの…少女だろう、きっと


それにしても…


「どうして一羽を受け入れたのか」

不審人物だと言って警察にでも突き出せば良かったのに、どうしてなのだろうか
童顔で、腰まで伸びた黒い艶やかな髪。町に出れば、何人もの男に声をかけられるだろう。
そして、一羽はニコニコとわけもわからず男に着いていってしまう。
男を疑いもせずに…

「心配だな」

自分に妹がいたらこんな心配をするのだろうか?それよりも早くこの時代に慣れてもらわないといつまでたっても一羽は独り立ちできない。

まあ、とりあえずはこの時代のことをびしばし教えていかねばな…



20120516

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