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「じゃあ一羽ちゃん行ってくるわね」

秀麗様はその他にも、火を使わないようにとか、外には極力出ないようにしてほしいとか、様々なことを私に言った。
私はそれを一つずつメモとして紙に書いていく。まだ、漢字はあまり書けないのでほとんどが、ひらがなだった。

「分かりました! 秀麗様、いってらっしゃいませ」

秀麗を送り出し、私は自分の部屋に戻り勉強を始めた。今日は算数だ。テキストには小学6年生の算数と書いてあった。

「うーん、今日は少し難しい…」

唸りながら問題を解いていく。そして数時間後テキストを半分終わらせた。
お昼が近くなり、私は秀麗様に言われた通りお湯を入れるだけでできるカップ麺を食べた。私のお気に入りはシーフード味だ。

「うーん、美味しい」

いつ食べても頬っぺたが落ちるくらい美味しい。今まで海産物は干物などに加工されていて、刺身やこんな形では殆ど食べたことがなか

ったため、初めて食べたときは感動した。最初は食べるのに抵抗はあったけれど……
皇毅様がお仕事で昼間いないときなどはずっとカップ麺やレンジで温めるものばかりで、どれもとても美味しい。私のいた時代では考え

られないものばかりだ。それに味だってちょうどいい濃さで塩辛くない。

「お昼から何をしよう……」

お昼を食べ終わり私は縁側に寝転がった。日差しは暖かく目を閉じたらすぐに夢の中に入ってしまいそうだ。あー…ダメ、寝ちゃだめだ

…寝たら…夜…眠れなくなるのだから…



「なんだか寒い」

起き上がると少し体が痛んだ。それはこの縁側で何も引かずに寝たから。目を開けると柔らかな暖かい日差しは幻のように消えていて、

冷たくなった縁側しか残っていなかった。
私はいったいどれくらい寝ていただろうか?
近くの時計を見ると夕方になっていた。
もうすぐ誰かが帰ってくる時間。最初に誰が帰ってくるのだろうか。

「ただいまー一羽ちゃん一緒に買い物に行きましょう!」

最初に帰ってきたのは秀麗様だった。秀麗様は荷物を玄関に置き、私を待っている。

「今晩の夕食の買い出しに私がお供して良いのでしょうか?」

「いいに決まっているでしょ?私たちは家族同然なんだから、ね?」

家族…なんて良い響きなのだろうか。今までこんな密接な関係の人はお母様くらいだった。お父様はいつもお仕事か勉強をしているし、

お兄様も同じでまったくお話したことがない。
それにこの時代の人は私のことを気にしないし悪く言わない。それがどれだけ幸せか…これ以上幸せなことはない。

「それではお供します!」

私は秀麗様と一緒に商店街に向かった。

20131212

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