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外に出た二人は街へと繰り出した。街は日曜日ということもあり賑わっていた。

「じゃあ、まずはここに入りましょう」

秀麗は若い女の子が好きそうな服が置いてあるショップへと足を踏み入れた。

「これなんて一羽ちゃんに似合いそう……あれ?」

秀麗は一羽が近くにいないことに気づき辺りを見合わした。一羽は入口前で見知らぬ男性と青い顔をしながら話していた。

「妹に何かご用ですか?」

秀麗は顔を引き攣らせ怒りを我慢していた。一羽の顔はパアッと明るくなり、秀麗に抱き着いた。
男性は仕方ないと逃げて行った。

「芸能人にならないかって言われて……断っても離してくれなくて……怖かったです、とても」

一羽は涙目になりながら秀麗にしがみつく。秀麗は一羽の頭を撫で、落ち着かせた。

「変なことがあったら私を呼んでね。助けにいくから」

秀麗は一羽の手を握りさっきの店の中に入った。

「可愛いですけど、見えちゃいませんか?」
大丈夫よと秀麗は不安がる一羽をなだめ試着室に向かわせた。試着が終わり中を見ると顔を赤め、スカートの裾を握り、もじもじしている一羽がいた。

「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫よ!他の人だって短いスカート履いているでしょう?」

確かにと試着室から辺りを見回した一羽は頭では納得したが、やはり慣れない短いスカートに違和感を感じていた。今まではロングスカートや長いスボンばかりだったし、元の時代では足を出すこと自体駄目だった。

「やっぱり恥ずかしいです……」

一羽は消え入りそうな声で秀麗に言った。秀麗はまあ仕方ないと言った顔で、代わりに膝くらいまでのスカートやキュロットスカートを持ってきた。これならまだ大丈夫だと一羽は喜び、試着した中から何点かを選び購入した。

「これ……凄く可愛いですね」

一羽が立ち止まったのはあるショップのショーウインドー前だった。そこにはフリルのついた白いワンピースが飾ってあった。

「これ一羽ちゃんに似合うと思うわ」

買いましょう!と言う秀麗に一羽は首を横に振った。

「たくさん買ってもらいましたし……それにこれ高いんじゃないですか?」

秀麗は値段を確認するとそのワンピースは約一万円ほどであった。さすがの秀麗もその値段には唸った。

「一万か……少し高いわね」

「だから、諦めます。秀麗様、行きましょう」

一羽は秀麗の手を握りその場から逃げるように立ち去った。
その日は大量の袋を持ち紅家へ帰った。



「あっ、もしもし葵部長ですか?お忙しいところすみません一羽ちゃんのことなんですけど……」

その日秀麗は夜遅くに皇毅に電話をしていた。
電話はできたら毎日一羽のことを報告してほしいと言う皇毅の頼みからだった。
電話が終わると秀麗は明日からのことを考えていた。

20130722

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