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「すごい・・・」
一羽は目の前の家を見てびっくりして動けずにいた。なぜなら・・・

「みかけはあれだけど中はボロだから!」

そう、一羽の目の前には屋敷があったからだ。
その様子を見た秀麗は期待しないでと一羽に声をかけ、重厚そうな玄関の扉をあけた。中はきれいに整理整頓されており、とてもきれいだったが、とても現代的だった。

「中は新しいんですね・・・」

一羽は少し残念そうに呟いた。

「家は大きく見えるけど中はそんなに広くないのよ。それに使ってない部屋ばっかりなの」

着いたのは畳のある大きな部屋だった。縁側もあり日当たりも良さそうだ。
その部屋には男が二人座っていた。一人は柔和な顔をしている男で、もう一人は少し目つきが厳しい男だった。

「この子が一羽さんだね。私は紅 邵可。そしてこっちは・・・」

邵可は目線を隣に移した。

「・・・私は静蘭」

静蘭は一拍置いてから挨拶をした。どうやらあまり彼からは歓迎されてないようで、笑顔がひきつっていた。

「私は一羽です。これから一週間よろしくお願いします。」

そう元気よく一羽は挨拶をした。その言葉に反応したのは不機嫌だった静蘭。

「一週間・・・?お嬢様の話ではずっとだと・・・」

「あー!!き、気にしないで一羽ちゃん」

秀麗は焦った様子で静蘭の言葉を遮った。

「えっと、あの・・・」

「挨拶も済んだことだし、部屋に行きましょうか。こっちよ」

秀麗は一羽の背中を押すようにその部屋から出た。一羽は秀麗の後をくっついて歩いた。
階段を使い二階へ行くとそこは長い階段があり、その通りには部屋へ通じる扉やら襖が並んでいた。

秀麗は一番奥の襖を開けた。

「ここが一羽ちゃんの部屋よ」

一羽は中に入り全体を見渡した。

「畳・・・懐かしいです、とても・・・」

一羽は畳を昔を懐かしむようになでた。

「時計はちゃんと飾ってあるから大丈夫だと思うし、後は・・・」

ちらりと秀麗は一羽の方を見た。そして何かに気づいたようでそっと一羽に聞いた。

「もしかしてだけど、服とかまだ私のお下がり着てたりする?」

「はい!」

やっぱりと秀麗は肩を落とした。

「一羽ちゃんはかわいいんだから、お下がりじゃなくてちゃんとした服着ないと駄目よ!」

秀麗は言えなかった。あの服の中には穴が開いた服や虫に食われたものなどが入っていることを・・・

「葵部長のことだから何か服を買っていると思ったんだけど・・・まあ、あの人も忙しい人だから仕方ないわね」

よし!と秀麗は気合いを入れ、一羽の手を取った。

「じゃあ、明日一緒に服を買いに行きましょうか!」

楽しそうな秀麗と、状況があまり分かっていない一羽であった。

そしてその夜

一羽は布団の中で眠れずにいた。一羽は思い切って廊下に出た。そして、外の空気を求めベランダの扉を開けた。

「星はどこの時代も変わらないのね・・・」

それに対して私はどうだろう。こちらの生活に慣れ始めてきている。それがなんだか自分じゃなくなってきているみたいで怖かった。

「眠れないんですか」

「あっ・・・えっと、静蘭さん?」

「そんなに構えずともいいですよ。昼間は失礼しました。」

静蘭は一羽の隣に立った、だが静蘭は一羽の方を見ない。それは一羽が泣いていると思ったからだ。

「いえ、気にしていませんから謝らないでください。それに・・・」

と一羽は言葉を続けようとしてやめた。まだ皇毅にも言っていないことを、今日初めて会った人には言えなかった。機嫌を損ねてしまっただろうかと静蘭を仰ぎ見た。しかし、静蘭は顔色ひとつ変えなかった。

「それより、冷えますから中へ入ってください。」

静蘭は察してか、一羽を部屋に戻るように言った。その言葉にホッとしたのか静蘭の言う通り部屋に戻った。

部屋に戻った一羽はさっきの眠れなかったのが嘘のようにぐっすりと寝た。


20121121

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