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時計の針は8時半を指していた。
「皇毅様おかえりなさい!」
「ああ、ただいま」
皇毅は部屋に入り周りを見渡した。リビングには縮こまっている秀麗と、クッキーを嬉しそうに頬張る一羽の姿があった。
その一羽の姿を見て皇毅は安堵した。と言うのは朝の喧嘩でまだ一羽は怒っているものだと思ったからだ。
「とりあえずこれでも食べながら話すことにするか」
と皇毅は言った。皇毅が買ってきたのは弁当屋さんの唐揚げ弁当だった。
三人は無言で食べ始めた。なぜならとても空気が重かったからだ。
なぜなら今日一日、皇毅はずっとこのことに関して考えていたからだ。仕事は淡々にこなすものの頭の中は一杯だった。
「そろそろ本題に入ってもいいでしょうか?」
最初に声を上げたのは秀麗だった。
皇毅はそうだなと頷き、一羽は意味が分かってなかったが、コクリと頷いた。
「一羽、私は一週間仕事の関係で家を空けることになった。」
「と言うことは・・・私は秀麗様のお世話になると言うことでしょうか?」
そういうことだなと皇毅は頷き、一羽の顔色を伺った。
「それでだ、こいつにはおまえのことを知ってもらわなくてはいけない。」
「そうですね・・・」
一羽は言いづらそうだったが、秀麗の熱いまなざしを受け淡々と語りだした。
「実は私、平安時代からきたみたいなんです。」
「・・・平安時代って本当に?」
秀麗は思いもよらないことだったので、簡単には信じられなかった。
だが、あの堅物で有名な葵部長が否定をしないと言うことは本当なんだろう、と秀麗は自分で納得した。
「疑いたくなるのも分かるが、本当だ。なんて言ったって、ある日突然湯船に浮いていたんだからな。しかも高価な着物を着てな」
「私、信じます。」
と秀麗は一羽の方を向き、抱きしめた。一羽は驚き、固まってしまった。
「私、秀麗様のところに行きます。
「一羽・・・」
成長したなと皇毅は言いそうになったが、なんだか恥ずかしくなってやめた。
「一羽ちゃんよろしくね」
「はい!お世話になります。」
そうして一羽は一週間秀麗の家でお世話になることになった。
20121022
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