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一羽は皇毅が帰ってくるまでベッドに突っ伏して寝ていた。
それは今日の朝皇毅に何度も釘を刺されたからだ。何度も一羽はいろいろ家事などをすると言ったのだが、すべて却下された。
一羽はそれにショックを受けたのか、今日一日中皇毅が作った昼食の手作り弁当を食べずに、部屋に閉じこもっていた。
「私ってこんなに意地っ張りだったっけ?」
今まで人に言われるまま生きてきたせいか、こうして自分で自ら何かをするなんてことなかった。
だからか、いろんなことをしてみたいと思ってしまう。
それに皇毅様ばかりに負担をかけさせられない。毎朝忙しいのに私のためにご飯やお弁当を作ってくれる。
洗濯だって・・・干すのは私に任せてくれたけれど。
お世話になりっぱなしじゃ申し訳ない。
だから、私がやります!と言ったのに
確かに今日の朝は手伝おうと思ってお皿を洗っていたら手が滑ってほとんどのお皿を割ってしまったのだけれど・・・
それは私が悪いと思うけれど・・・でも、それが原因で全部却下しなくてもいいのに
ーーーガタッ
「あっ帰ってきた」
やっぱり私が悪いのだから謝らなくちゃいけないと一羽は立ち上がり玄関に急ぎ、鍵を開けた。
「皇毅様お帰りなさい!それに今日の朝はごめんなさい。私迷惑がかからないように頑張ります・・・だから」
「え?」
「・・・え?」
目が合ったのは一羽が待っていたのは皇毅ではなかった。
「あなたは・・・私に服をくださった方ですね!」
一羽はこの間のことを思い出した。
「初めまして、私の名前は紅秀麗。よろしくね」
「はい!私の名前は一羽です!」
お会いできてうれしいですと一羽は頭を下げた。玄関で話すのもと一羽は秀麗を部屋に通した。
「葵部長は仕事が終わってからくるみたいだからコレどうぞ」
渡されたのは丸いクッキーの箱だった。一羽は何だろう?と箱をコンコンと叩いたり、匂いをかいだりした。
「開けてもいいですか?」
一羽は控えめに言うと、秀麗はいいわよと快く返事をした。一羽はゆっくりと箱の周りにあるビニールをとっていく。その姿があまりにも真剣だったので、秀麗は笑いをこらえてみていた。
「そんなにきれいにやらなくてもこうした方が早いわよ」
ほらと一羽があんなに苦労していたことを一瞬でやり遂げたので、一羽は尊敬のまなざしを秀麗にむけた。
「秀麗様すごいです!」
「そんなことないわよ、一羽ちゃんもすぐにできるようになるわ」
そして箱を開けると一羽は「すごい!」と声をあげた。
一羽は目をキラキラさせクッキーを眺める。
秀麗はその姿を見て初々しくていいなと微笑んだ。
「・・・おいしい!とっても美味しいです!」
一羽は一枚、また一枚とクッキーを頬張っていく。
(クッキー一枚でこんなに喜ぶ人は初めてだわ・・・でも、見てて和む)
その様子を見ていた秀麗はあることを思った。
(もしかして、一羽ちゃんってこの時代の人じゃないとか?)
まさかあるわけないと秀麗は首を振った。
「小説の読みすぎね」
「え?どうしました?」
ううんなんでもないわと一羽に言った。
「そういえば皇毅様きませんね・・・」
「もうすぐで来ると思うんだけど」
時計を見ると8時をすぎていた。
それから20分後皇毅が帰ってきたのだった。
20121020
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