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「これがお祭り…」
そして次の日、一羽はすべてのドリルを新しい紙に書きなおし、皇毅も驚いた顔をしていた。
一羽は辺りをキョロキョロと見まわし、一向に動こうとしない。
皇毅は一羽に合わせ立ち止まる。
「もう家に帰りたくなったのか」
皇毅がそう聞くと一羽は大きく首を振った。
「違います!感動しているんです!」
ああ、やっぱりなと皇毅はため息をついた。そして一歩、また一歩歩き出す。
「ああっ、待ってください!」
そう言って、皇毅の姿が見えなくなる前に一羽は追いつきはぐれないように服の裾を握る。
人はどんどん増えていき、揉みくちゃにされることもしばしばだった。
「これとても冷たいですね…でも美味しいです」
一口一口ゆっくりかき氷を食べる一羽、その傍らには缶ビールを片手に空を眺める皇毅の姿があった。
「始まるぞ」
「え?」
一羽は皇毅に言われ、空を見上げた。するとドーンと音がし、夜空に花が散った。咲いては散って、咲いては散ってを繰り返す。
「綺麗ですね…」
「…そうだな」
それから花火が終わるまで二人は何も言わずじっと夜空を見ていた。
花火が終われば帰宅ラッシュになる。二人もその時間に帰ろうとしたため、また揉みくちゃにされ歩いていく。
一羽ははぐれないように懸命に皇毅の服をつかむ。その様子を見た皇毅は一羽に手を差し出した。
「はぐれるなよ」
「はいっ!」
一羽はその手を握り、二人並んで歩いた。
そしてそのまま離すこともなく家に帰ったのだった。
20120914
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