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玄関のチャイムが鳴り、扉を開けると大荷物を持ち、疲れた表情の紅秀麗がいた。
「遅かったな」
「遅かったな、じゃないですよ…はー…疲れた」
紅秀麗が持ってきた袋の中身を見てみれば、少し色あせたTシャツやスカートが見えた。
「随分使い古したやつばかりだな」
「いらない服を持ってこいって言ってたじゃないですか!」
あー…キャンキャンうるさいやつだ。気が滅入る。
「皇毅様、そちらの方はもしや…!」
「なんだ、一羽もう出たのか」
風呂場から出てきた一羽は紅秀麗と私を交互に見合えば、興奮気味に言った。
「現代では女が男の所に通うんですね!私は皇毅様の女房の一羽で…んー!」
口よりも体が先に動いて、一羽の口を手で塞いだ。
「さっきの言葉とこいつのことは綺麗さっぱり記憶の中から無くせ、分かったな?」
「は、はい!し、失礼しました!」
紅秀麗が帰った後、ジタバタする一羽を放した。
「どうして帰らせてしまったのですか!?もしや、私が邪魔…そうですよね、ごめんなさい…」
「あいつはただの部下で、恋愛対象とは見ていない。それにだ、今は昔と違って通い婚は無いんだ。」
そう言うと一羽は涙を目に浮かべながら「え?」と間抜けな返事をした。
「今は自由恋愛と言うか…」
あまり詳しくない分野だが、パソコンで調べながら恋愛や今と昔で違う所や常識を一羽に教えた。
「大丈夫か?」
「頭がいっぱいでどうにかなりそうです…」
無理もない話だが、仕方のないことだ。これから一羽は現代で暮らしていかなければならないのだから
「とりあえず、何とかなるだろう」
一羽と会って、一緒に住みだしてからまだ数日しか経っていないが、この生活に慣れてしまった。
いつかはこの生活にも終わりが来るだろう。その時が来るまで…楽しむとしよう。
20120608
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