「これは?」

いきなり帰ってきて、ご飯も食べず渡されたのは茶色い封筒。なんでも旺季様から渡されたようだった。

「あっ、ご飯温めて置いておくので、その間にお風呂でもどうぞ」
私はいそいそと今日作った料理を電子レンジに入れた。
今は夜9時。私はとっくに夕食を済ませてしまったため、レンジで温め終わった後、テーブルに置きそのまま自分部屋に戻った。
部屋に戻り、恐る恐る封筒の中身を取り出すと、なかには通帳など大事なものが入っていた。
私は驚いて急いで葵さんの元に行った。
「一体、これはどう言うことですか!?」

テーブルの上には通帳を置き、どう言うことか説明を聞こうとした。
「どう言うと言われてもな…旺季様はお前にと言って渡したんだ。」

「でも!こんな大金簡単には貰えないよ…」

私はぐしゃりと封筒を潰した。
「まあ…普通はそうだろうな。」
葵さんの反応はとても淡泊で、取り合ってくれそうにない。パクパクとご飯を食べている。
なら、旺季様に直接会って…

「旺季様は忙しい方だからな、会うことは難しいだろう。」

「なっ!」
どうして分かったのだろうか。私はまだ何も言っていないのに。

「ああ、結衣。今週の土曜日空けておけ」

なんで?と言おうとしたが、言わなかった。なぜなら、それだけ言って席を立ってしまったからだ。
「あっ、洗うよ」

「そうか」
そして、そのまま葵さんは風呂場に向かった。
私は仕方なく部屋に戻った。
机の上にはさっき封筒から出した書類などが散らばっている。その中に真っ白い大きな鶴が入っていた。
「なんだろう…」

不自然なので、手に取って見てみることにした。
明かりに照らすと何か文字が書いてあるように見えた。紙を開いてみると中には文字が書かれていた。
【このお金は結衣の両親が生前コツコツと貯めていたものらしい。
なぜ私がこれを持っていて、なぜ、今君に渡すのか知りたいだろう。
これは結衣のお祖母様が死去する前に私に渡されたものなのだ。
親戚とは言え、人間だ。
このお金のことを知られたら欲しがる人間が出てくる。
私はその頃、やっとのことで会社を軌道に乗せ忙しい日々を送っていた。
だから、結衣を引き取ることが出来ず君には大変苦労をかけさせてしまった。本当にすまないと思っている。
時間が合えば、二人で墓参りをしよう。

      旺季より】 
「旺季さんがここまですることじゃないのに…」

どうして…どうして旺季さんはここまで私によくしてくれるのだろう。
きっと葵さんに言っても知らないって言うんだろうな。
今度、旺季さんに会ったら詳しく聞いてみなければ。
そっとその紙を机の中に入れた。


20111222

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